その他著権駄文部屋1

□促さなければ・・
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「…っ」

その姿を見つけたのは
偶然だった
少し
遠回りして帰ろうと
あまり遅くなると心配を掛けるし
それでも早く帰るのが躊躇われた
胸の中のモヤモヤしたものがせめてましになる迄は一人で居たかった
街並を通り
人込みに流されるままに帰路を歩んでいると
あの姿を見つけた

『もう大丈夫だ』

優しく頼りになる言葉が浮かぶ
その瞬間に
その姿を追い掛けていた
間違いとか他人の空似とか考えもしないまま
追い掛けた
その姿は人込みを街並を
ただ
進み
街並を外れた路地裏に姿を消してしまった
それでも追い掛けた
其処に姿がなくても
漸く
その姿が消えた所まで追い付いた
でも
其処には誰も居なかった

「…っ」

そう簡単に逢えるわけなんてないのに
馬鹿だな…
自嘲気味の笑みを浮かべ肩を落とす

「そんな顔をして…追い掛けられたら待つしかないじゃないか…」

呟くような声に俯き加減気味だった顔を上げ
声のした方を振り向いた
其処には追い掛けていた存在が、鳥男が居た
その姿を目にした途端
泣きそうになった
だけど
どうにか堪える
何か言葉を紡ごうと口を開こうとしたが言葉が出せなかった

「…どうした?王者の資格を奪いに来たのではないのか?」

それとも…
仲間が来るのを待っているのか?
発っせられた言葉に肩が震えた
そう思われても仕方ない
理由なく追い掛けられているなんて誰も思わないから…
理由は無いと
ただ…

「……すまん。」

少し
意地悪をしただけだ
頬に鳥男の手が触れ
思わず目を瞬かせる

「お前は…我慢をし過ぎる…」
「え…?」

漸く言葉を絞りだせたと同時に
鳥男の肩に顔を寄せる形で身体を抱き寄せられた
思わぬ事に驚く

「苦しいのなら…辛いのなら…“形”にしてもいいんではないか?」
「え…?」

鳥男は静かに

「泣きたいのなら…泣けばいい……」

言葉を紡ぐ
紡がれる言葉に次第に身体が震えていくのが分かる

「お…俺…は…」
「俺は…お前がそうやって…何時か…感情を…“心”を失うのではないかと…」

心配で堪らない…
紡がれた言葉の瞬間
繋がりを断つ為と利用された記憶から
もう会えないと思っていた人の最後の言葉を思い出す
複雑で
素直になれなくて
でも
二度目の別れが悲しく無い訳が無かった
再び逢えた事が嬉しくない訳が無かった
ただ
ただ
思わず鳥男に縋るようにその服を掴んだ

「お…俺…あ、あいつ…ゆる、せ…ない…」
「…」

縋り
絞りだすように
溜まっていた“感情(もの)”を吐き出す

「か、かあ…さ…んを…りよ、うし…て…」

ボロボロと
何時の間にか涙が流れていた
ごめんなさい
本当は
駄目な事だと
愚痴なんか零してはいけないことなんだと
分かっているのに
なのに
この手を放す事が出来なくてごめんなさい
何故
貴方の姿を追い掛けていたのか
俺は…
貴方に縋りつきたかった
貴方に聞いて欲しかった

「か、あさ…んの…の、ぞんだ…こと…でき、なか…た…」
「…そうだな…」

その人は
ただ
静かに
どうしようもない俺が泣き止むまで
溜まった“感情(もの)”を吐き出しきれるまで
傍に居てくれた




※24話後ネタより
バングレイの顔が母さんになるまで殴るとか言いかねない大和氏(笑)
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