その他著権駄文部屋1

□結局は、自分勝手。
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ああ
最悪だ
最低だ
沢山の“人”が犠牲になったのに
沢山の“命”が今も苦しんでいるのに
自分は
最低
最悪

屑だ…


「…っ」

あの“一瞬”
感じた不安と聞かされた“真実”が与えた感情が再び脳裏を巡り
両手で包むように握ったマグカップに力が籠もる

「どうした?飲まないのか?」
「っ?!」

後ろからの真理夫の声に振り向き
大和は言葉を濁らせながらも
う、うん…
もらうね

言葉を紡ぐ
ザワールドと初めて出会い戦い負けた
その日の夜
皆は自分の“心”をひた隠し
眠った
…己を騙してでも眠らなければ
休まなければ
きっと
再び戦う事になる
必ず
だけど
俺は
それが出来ない…
ザワールドの“強さ”に恐怖したというよりも
感じてしまった“感情”に自分自身は最低最悪だと感じているから

「…何かあったのか?」

ガタガタと音をたて
真理夫が隣の席に座り

「皆も…ちょっと変だったみたいだけど…」

其処が関係してるのか?
そう尋ねられ
言葉を詰まらせる
“戦う”力の事は黙っている
だから
吐きたくないけれど
何時も
嘘を
吐いてしまう

「ちょっと…ね…」

でも
自分から
思わせ振りな態度を取った割に
今はそれが出ない

「…あの…さ。おじさん」
「ん?」
「もし…もう一人…居候が増えたら…駄目かな?」
「おじさんは別に構わないぞ?賑やかなのは良いことだからな〜♪」

その言葉に
ホッ
と胸を撫で下ろした
だが
途端に沸き上がった
あの時
あの瞬間の“感情”を思い出し

「や、やっぱり…わ、忘れて…今の。」
「大和?」

それを流し込むように
作って貰ったホットミルクを一気に飲み干しカップをテーブルに置くと

「やっぱり…おじさんの作ってくれたの美味しいよ」

ありがとう
今出来る精一杯の笑みを浮かべ
思わず音を立てながらも
立ち上がり
おじさん…
おやすみ

背を向けた時に

「大和」

名を呼ばれ
思わず部屋へと歩もうとしていた足先が止まる

「あれだぞ…大和」

真理夫の声音に少し肩を震わせながらも
何事もないように振り返りとぼけるように首を傾げる
だが
真っ直ぐに見つめられ
表情が硬くなるのを感じた

「大和…別にな、お前が考えてる事は最低最悪な事じゃない」

その言葉に
ひゅっ

喉が鳴った

「何でお前がそう考えてるか分からないけれど…誰だって考えたり思う事だ…」

だから自分を卑下にするな
その言葉に
何も言えず
ただ
泣きそうになるのを堪え
おやすみなさい

どうにか言葉を紡ぐと逃げるように部屋へと戻った
部屋のドアを閉めた途端に戸を背に
ずるずると床に座り込む

「おじさんには適わないな…」

苦笑いを洩らしながらもそう呟き
蹲るように膝を曲げ
そう言ってくれて
ありがとう
真理夫おじさん
でも
俺は…
あの時
エクストラプレイヤー
に初めて逢った時
その姿を見た時
ゾッとした
一つの“可能性”を考慮してしまったから
まさか
“あの人”じゃない…よね?
皆にとっては故郷に帰る為の大切なモノを盗んだ“存在”で
でも
俺にとっては
命を救ってくれた大切な“存在”で
人間態の姿なんておぼろげで
殆ど分からないから
描かれた似顔絵ではっきりと分かる程度だから余計にだった
ナリアにその“正体”を告げられた時
安堵した
ああ…
あの人じゃなかった
よかった
利用もされてなかった
本当によかった
皆から卑下にされる事も無いんだ
そう安心した
安心して
ハッ
となった
俺は
何を考えた…?
何を思った?
あの人じゃなくてよかったなんて…
なら
犠牲にされてしまった“存在”は良かったと…?
そんな
それは…
安堵
後悔
結局何もかもが自分勝手だ
その困惑が
エクストラプレイヤー
に対して
動けなかった
圧倒的な強さによる“恐怖”よりも
あまりにも自分勝手な嫌悪による“恐怖”
最悪だ
最低だ

「(…結局…向き合う事も…それからの考えも…自分を…拭う事じゃないか…)」

そのまま膝を折り
顔を埋めると
大和は静かに涙を浮かべた
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