錬金・調合駄文部屋 

□想い続けた先にあるもの
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《想い続けた先にあるもの》


ただただ強くなりたかった

ただただ強い人と戦いたかった

戦って強くなりたかった

それは何処か他の人とは違うんだと分かっていたとしても

ただ強い人と戦いたかった




「負けた・・負けた・・か」

愛用の剣が武具が手から滑り落ちる
身体中が痛い。
そうか・・これが痛みか

「悔しいな・・負けるとこんな気分になるんだ・・」

憤りも蟠りも無い・・
何処か楽になるような・・

「あぁ、十年前にこんな戦いが出来ていればな・・」
「ジジイなら間違いなくあんたに・・勝ってただろうな。」

霞がかる瞳を向ければ、先程まで自分が固執していた少年が息を絶え絶えにしていた

「君だって・・勝ったじゃないか・・たった今・・」

そう、君が勝った
悔しいなんて気持ちはない・・漸く自分は気づけた・・
こんな自分を気づかせてくれたのは君だよ・・

「俺が・・あんたに勝ったわけじゃないだろう・・」

その言葉にはハッキリと恨む気持ちも無いと感じた。
正直な気持ちなんだろう・・

「そっか・・じゃあさ、また僕が君と戦いたいって言ったらどうする・・?」
「願い下げだ・・当分はな・・」

・・・
あぁ、そうか・・

「当分は、なんだ・・じゃぁ、暫くして修行してもっと強くなったら、その時に・・」
「まだ、強くなるのかよ・・勘弁してくれ」
「あぁ・・楽しみだ・・本当に・・」



戦えたから
そして自分は知れた
それだけで十分で・・
次が無くてもいいかもしれない・・
この清々しい気持ちのまま・・



「ルゥ!ねぇ・・ルゥ?」

・・・・・

「ルゥ?」

・・・・
まどろむ中で聞こえたのは、騒がしくて聞いた事のある声・・

「・・サ・・サリナ?」
「よかった!気づいた!!」

身体の向きをゆっくりと変えられるのがわかった
身体中が痛い・・
痛みを感じながらも霞がかる目に映ったのは、清々しい程の空の色。
あぁ・・何だかとてもいいな・・

「本当に心配したんだから・・」
「・・・」

・・・・
なんだけど・・

「うー、心配したんだからぁ・・」

どうして君は静かに出来ないのかな・・

「・・・サ・・サリナ?」
「なっなに?」
「もう・・少し・・静かにしようよ・・」

どうしてここまで騒がしく出来るのか・・
勝負をしたのは僕で君じゃない。
負けたのは僕で君じゃないのに・・

「折角の・・気分が・・台無しだよ・・・。相変わらず・・騒がしい・・んだから・・」

そこまで、喧しくなる必要は・・

ポタリ

冷たい何かが頬に落ちてきた

「っ!・・・あ・・」
「うー・・ひっぐ・・何よそれ・・何よ・・心配しちゃいけないの!!!!!」

落ちて来たのは涙という名の水だった

「だって・・けっ怪我してるんじゃないかと、心配してたのに・・」
「・・・」
「きっ来て見たらルゥ・・たっ倒れてるし・・いっ一度もそんなの見たこと無いから心配して・・」

・・・・・

「ずっと、追いかけて憧れて大好きなルゥが負けたとか・・っぐす、信じられなくて・・うー」
「・・・・」

そっか・・
今頃気づけた・・

「・・・・ごめん」

側に居る君に対して
過去にしてしまった何かに対して・・
ただ呟く
何処かで願っていたのは・・
これだったのかな・・・
次に彼に会う時は、謝罪すべきだろう・・
あの人にも・・・
でも今は

「ちょっと・・休ませてよ・・・」
「っぐす、ルゥ?」

気づいた気持ちを忘れないように
今は・・・
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