錬金・調合駄文部屋 

□六月八日
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《六月八日》


「ありがとぉ〜」


ウサギの耳を、思わせるリボンを付けた少女は、もう一人の少女に、そう礼を言った。
とてもうれしそうな笑顔で…

「…」

そうか、今日は…
その笑顔の意味に気付き、あいつらに姿を見せないように、その場を後にした。



****



「あんたに…」

ギルド長の部屋を訪れれば都合良く、その部屋の住人はいた。
もっとも、居ないと言う方が珍しいが

「頼みたい事がある」
「あら?珍しいこともあるのね。」

あなたから私にだなんて珍しいわね
と微笑まれた。

「あんたにしか、頼めない。」

そう言いながら、ここに来るまでに考えていた物を書いたメモを机の上に置いた。

「…」
「…」

置かれた紙の内容を見て訝しげな顔をされたが

「つまり、私にこれをクエストにして、あなたに受けさせろと…」
「あぁ」

察してくれて助かる。

「へぇ〜」
「なんだ?」
「いいえ、別に」
「言いたいことがあるならはっきり言え。」

そう言えば、こちらをジッと見つめられ、微笑まれた。

「誰にあげるのかしら?」
「…」

ぐっ。そう来たか…

「…いっ従姉妹の親戚の「その言い訳は微妙よ。」
「…」
「で?誰なのかしら?」
「…っ。別に誰でもいいだろう!」

問い詰められれば、顔が熱くなったのを感じた。
思わず目を逸らし

「ただ…」
「ただ?」
「…あいつの…嬉しそうな顔を見たいと思っただけだ…」

女っていうのは、どうしてこうも…
だからと言って、こんなこと頼めるのは、この女しか居ないからな…

「それだけだ。」

自分が阿呆らしくなってきた。
思わず顔を片手で隠す。

「あなたも、そう思えるようになったのね」
「?」
「わかったは頼まれて上げる、でも、こちらの条件ものんでね。」
「あぁ…わかっ…」

ハッと誰かが部屋に来る気配を感じ、思わず。

「ノエイラ。すまん。」
「えっ!ちょっ」

女を抱き上げ、机の上に座らせると、急いで机のしたに潜り込んだ。


「ノッエイラー来たよ!」


部屋の扉を開けて入ってきたのは、よりによって…ばれないように、気付かれないように、息を潜めた。 会話が進む。
途中で、机越しに痛みを感じ呻きかけたが、なんとか堪え。
話が終わるのを待った。
終わりかけにただならぬ冷気を感じたが。

「どうして隠れたの?」
「…」

机の上から、覗き込まれ

「そんな必要なかったはずじゃない」
「…」

そんな事、頼んでいるだなんてばれたら恥ずかしいだろうが。

「まあ、あなたみたいな人が可愛らしい依頼を頼んでいるだなんてしれたら、プライド粉々よね。」
「…っ」

言いたいこと言いやがって…
ムカッときたが、文句は言えないな…

「今日中にだからな。」
「えっ?急ぎなの!」
「あぁ…」

とりあえず机の下から出ようと、動く。


「ねぇねぇ!ノエイラ!」

「きゃっ!」
「!!」

突然の来訪者、もとい再び先程の人物が部屋を訪れたものだから、慌てた。
完全に動いてはいなかったので、その部屋にいるとはばれなかった。

「あっあら?どうしたの?ネルちゃん。」
「あのね。あたし達とエッジ達以外に、ここに来た?」
「え?いえ来てないわよ。」
「そっか…」

聞こえてきた、声は先程と違って悲しんでいるようにも聞こえた。
だが、直ぐ様

「なら、いいや!ありがとノエイラ」

そういうと部屋を後にした。
暫く、沈黙が続いた。
その間に机の下から出ると。

「…ちょーと、面倒なクエスト幾つかあるんだけど?」
「…」

そう言ったノエイラの顔は、何かに気付き何かを楽しもうとする顔だった。

「わかった。受ける。」

そう言わざるえないよな…
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