錬金・調合駄文部屋 

□お礼は言葉で・・
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《お礼は言葉で・・》


「ノエイラ…女は、どういう物がほしいんだ?」

何時もムスッとした表情の青年が自分よりも年上(多分)の女性にそう尋ねた。

「どういう物が欲しいって…」

唐突に尋ねられた言葉に目を点にして驚いたが、直ぐ様口元を緩め

「あら、私に何かくれるの?」
「ただ、聞いただけだ。」

表情を微塵も変えずに、そう返されたのでため息をつき

「冗談の通じない子ね…」

二回ほど首を横に振ると

「そうね…私なら下…コホンッ。休みが欲しいかしらね。」

仕事、最近多いから…とニコリと微笑んだ。

「…そうか」

「あまり、参考にならなかった見たいね。」

何かの答えが貰えるのを半ば期待していた分、肩を落とすはめになったが

「別に、時間を取らせたな。」
「いいわよ、気にしていないから。」

そう言ったノエイラは、ふと閃くと

「ユアン君にでも聞いてみたら?」
「…」

その名を聞いて苦虫を潰したような表情になる

「彼なら、そういうの詳しいはずだし…って、その顔はもう聞いた後見たいね。」

苦笑し、呆れながらに

「彼、なんて言ってたの?」

と聞いた。青年はその問いに、ありのまま言われたことを答えるべきか、はたまた黙っているか悩んだ。
が…

「…答える義理はない、邪魔したな。」

そういい、部屋を後にした。
曖昧にされた返事に思わず女性は、

「からかおうとした事気付かれたかしら?」

と笑った。


『あの女性、明らかに笑ってましたね』

ギルド長の部屋を出、タイミングよく、彼にしか聞こえない声がそう言った。

「…」
『敵に廻すのは避けたいな』
「…」

人目が付く所で返事をすれば、怪しまれ可笑しい奴だと思われるのを知っていながら、こいつらは話し掛けてくる。
一度、本当に圧し折ってやろうか。

『絶対にあれは“下僕”とか言い掛けてましたよね』
『差し詰め女王さまの犬か?アーハハハッ!』
「てめぇら…」

さすがにブチッ。
このまま湖に沈めてやろうかぁ!
幸い、ギルド内から出てきてはいるので可能だが…

『何か?ようかマスター?』
「…なんでもない」

そんなことを言えばこいつらの思う壺なのはわかっているので、それは心中に留めておいた。

『それにしてもあれですね。結局、肝心なことが聞き出せなかったですね』
「…まあな…」

ユアンの影響か、毒気にやられたのか俺は一体何を…

『年の近い友人とか、いれば相談できたかも知れませんが…マスター友達いませんもんね』

グサリッ

その言葉に思わずよろめき立ち止まる

『目上の方に聞いても結局は無駄足で一体何してるんでしょうね〜?』

グサグサグサ

痛恨の連撃

『エラスムス』
『はい?』
『それくらいで、やめてやれ。ショック受けてる』

そういえばそうだった…奴は性格が悪いがこいつは性質が悪いんだった

「本当に、俺は一体何やってるんだろう…ハハッ」

落胆し、自嘲気味に笑いながら
もう、気にするのはやめよう。その前に何故、俺が奴らのことを気にしないといけない。
半ば自問自答を繰り返し納得するとギルドを後にした。
しばらく、歩みを進めていると

「アッシュだ〜」

ん?名を呼ばれ、そちらを向けばエルネス姉妹がいた。
軽く一瞥し、

「…フン」

鼻で笑う。そして気付く、
確かエルエスの妹は…くれていたな。

「…うまかった」

相手に聞こえているか分からないけれど…
顔には決して出ることがないが嬉しかったから。
礼とは言えぬ想いをそっと呟き、その場を後にした。





すれ違ったエルエス姉妹気付かれる事無く視線をむける。
言葉は聞こえたか分からなかったが、あいつはこちらを向き優しい笑みを浮かべていた。
思わず、背け顔を押さえる。
アゾット剣が
ゆでだこになっているが…
と呟いたのを聞きながら

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