錬金・調合駄文部屋 

□勇者留年!?
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《勇者留年!?》

「此処は何度来ても眺めがいい場所だ、まさにこの俺に相応しいな!!ガハハッ」

背負う機械剣を地面に刺し、その場に腰を下ろすと目の前に広がる絶景に吹く穏やかな風を肌に感じ目を細めた。


ここは龍の墓場、天の道にある一つの場所。

嘗て、テオフラトゥスという名の錬金術士がたった一人出来た場所

そして、約半年ほど前にアトリエの仲間と訪れた場所

その仲間の中には嘗て、ここを一人で訪れた錬金術士の血を引く後輩もいた


『グンナル、お前良いのか?』
「師匠・・どうした俺は呼んではいないが?」
『わしとて、呼ばれなくても出る時はある・・』

自分の名を呼んだ主に視線を向けることなく会話する。
向かずとも自分の名を呼ぶ者を知っているからだ、全身を石の鎧で覆った威厳ある姿を持つ、自分が苦労して契約した金のマナ・・

『お前、今日は試験のある日ではなかったか?』
「おーそうだったか?」
『・・・・その前は千年樹の頂上で特訓すると言って受けてなかったようだが?』
「ん?そんなこともあったかぁ?」

視線は絶景に向けたままで、相手の言葉をさらりと受け流す。
金のマナはため息をつき

『わしの契約者ながらなんとも・・』

と首を横に振った

「ガハハッ!そう考え込むこともあるまい師匠!!」
『・・・誰の為を思って・・』
「なぁ、師匠」

不意に風が変化した気がした
ゆっくりとだが日が沈みだした為だろう・・・

「俺は師匠に出会って自分のマナにするまで己自身の夢に迷いは無かった・・」

視線を絶景から初めて己の手の平へと向けた

「だがな、あいつらと共にいて数々のことを学ぶうちに迷いが出来たのだ・・」

開いた手を拳にし、力を込める

「自分はこのまま進んで行っていいのか・・と」
『・・・』
「このまま行けば俺は正義の錬金術士に成れる事は必須だろう・・だが、あいつらは・・・」

どうなる?

先程まで穏やかだった風が少し強くなり赤髪の青年と金のマナに降り注ぐ、それに身を重ねること無く

「・・・気になるのだ、苦しむマナを見て涙しそうになるあいつが。」

このままだととんでもない事が起きる気がして・・な

何時もは見せることの無い表情でそう答えるとまた視線を絶景へと向けた
すでに夕日は暮れ辺りも段々と薄暗くなっている

『グンナル・・』

金のマナは赤髪の契約者の名を呼ぶ

「それにな、師匠。」

先程の表情は嘘だったかのように何時もの何かを企むような表情になり

「俺は彼奴に正義の心得を教え足りんのだ!!」

その場に立ち上がると

「彼奴に正義の心酔を叩き込むまでは・・正義の使者とする為にはまだまだ鍛えたりん!!」

と豪快に笑い出した。

『・・・フッそうだな。』
「ということでだ師匠!!新しい必殺技を覚える為に今から特訓だ!!」
『そうだな、そろそろ新しい技を覚えるのも必須・・付き合ってやろう・・』

金のマナはそう言うとニヤリと笑った。

「あっ!」
『!?どうしたグンナル?』

急に声を上げた契約者に驚く金のマナ

「しまった・・このままでは俺が先に卒業してしまうではないか!!」

今気づいたとばかりに驚く契約者に

『・・・どうするかは後で考えればいいだろう?』
「おぉ!!そうだな!!今は新しい技を覚えるのが必須!!さすがは師匠だ!!」

地面に刺してあった機械剣を再び背負いなおし魔物の蔓延る場所へと足を運ぶ
そんな彼の背中を身ながら金のマナはポツリと呟いた。

『結果は見えているがな・・』
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