捧げモノ&素敵頂きモノ駄文部屋1

□闘い(ねつ)を求む“魂”と懐に舞う“蝶”(たましい)
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「…」

雪が舞う
寒々しくも
冷たい
雪が

「…」

ふっ
と息を吐けば
舞い続ける雪は溶け
溶けぬ雪は地面を覆う
先程まで
血を通わせ
魂を震わせた
“モノ”を
空を見上げれば薄灰色の一色から
永遠のように雪が舞う
ああ
何だ
この
“感情”は

「奉先」

名を呼ぶ声を見下ろした
降り積もった雪の所々を避けるように
此方に一人“蝶”が舞う

「…貴様か」
「此処での戦は終わったようだ」

ん。
と差し出されたモノを見て眉を顰めた
此方のそれに気付いたのか

「羽織(マント)を拝借してきた。身体を冷やすな奉先。いざという時に動けなくなるぞ?」

そうなったら
すごく格好悪いがな
と笑みを浮かべた
そう言われれば受け取らない訳にはいかない
無言で受け取り羽織った
途端に

「くしゅっ」
「…。」

と聞こえてきた

「…貴様の分はどうした?」
「まともに着れそうなモノはそれ以外見つけられなくてな…私は奉先と違って身体を動かさなくても戦える」

“蝶”は自らの武器を取出し“胡蝶”を舞わせた
それでも
やはり

「だから大丈夫…くっしゅ」

聞こえた

「…貂蝉」
「?」

“蝶”の名を呼び
その手を掴み抱き寄せた
小さな悲鳴に耳を貸さずに羽織った羽織に共に包まれた

「ほ、奉先!敵が来たらどうする!」
「…何処に居ると言うんだ?」

何処に?
慌てふためく“蝶”に自嘲気味の笑みを浮かべた

「何もない…何処にも居ない…。くくっ。俺を滾らせる“モノ”さえ無い…」
「奉先…」

周りにも
何処にもない
全ては
冷たく
無機質な
“何”かしか…

「“コレ”は何だ?貂蝉?貴様には分かるか?俺には分からん…」
「…」
「“魂”が何も感じない…」

呟きながらも
空を見上げた
未だに降り続ける雪が全てを白く埋め尽くす

「…そうだな」

懐からの声に見上げていた視線を下ろした
“蝶”は白くなった“世界”を見つめ

「きっと“それ”が分かってしまえば…この雪でさえ隠す事は出来なくなってしまうと思うぞ」

その言葉に同じように白くなった“世界”を見つめ
口元を歪めた
冷めた
冷たい
無機質な
“何”も感じない“モノ”しかないのなら

「…端から隠すつもりなどない」

壊し
手に入れ
満たしてやる
己の“魂”が滾るのならば

「“魂”が感じることが出来るならば…俺は構わん」

例え
滅びの道だろうとも

「…奉先らしいな。」

溜め息と共に包む身体の熱を更に感じた
羽織の中で包む身体を此方に預けてきたからだろう

「貂蝉…?」
「奉先は暖かいな」
「…」

掴まれた腕に手を添え
更に身体を抱き寄せる

「…一つ“妙案”があるが…どうする?」
「知れたことだ」
「そうか…なら私は着いて往く事にしよう…」
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