その他著権駄文部屋2

□“縁”と輝きと“誓い”
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与えられた“命”
忠実にこなすべき事柄…

「(なんだけど…)」

逃げる
避ける
驚かれる…
そればかりでまともに話さえできない
まいったね
そんな日が幾日も続いた
騒がれたり我儘言われるよりましたけど…

「(どうにもならないよね…)」

どうにもならない分
遠くからの“見張り”に徹底することにした
敵が来たら葬る
ただ、それだけに…

「ん?」

小さな悲鳴に近づいた
すれば守るべき“命”を受けた者が木の上に上り、降りられなくなったのか
ぴいぴい泣いていた

「…何してるんです?」
「お、おりられなくなったねこどのをたすけようとしたのだ!そしたらおりられなくなって…ねこどのはかんたんにおりてしまって!」
「そりゃあ猫だし、これぐらいの高さなら降りれますよ。で、あなたは降りられなくなったんですね」

一度、コクりと頷いた
やれやれ

「困った方ですね…ほら、降ろしますから」
「う、…」

差し出した手は取られることはなかった

「よ、よい!それがしみずからおりる!」
「…」

自力で必死に降りようとしているが
枝に引っ掛かった

「うぅ〜」

…。
意地をはるからだよ

「…ねぇ。そんなに俺が嫌い?」
「ぬっ?」
「この木…結構高いよね…。弁丸さま…上ってみません?」
「!?」

小さく笑みを浮かべ、飛び上がり、守るべき対象の首根っ子を引っ張り、木の一番上へと上った
目に映ったのは日が沈み夕焼け色に変わりつつあった空だった
何度も見たことのある空だ

「たっかいね〜」
「あわわ」
「あぁ、ごめんごめん」

木々の安定している枝に降ろしてやれば、慌てながらに足に抱きついてきた
なんだろうね…
本当に…

「弁丸様…俺の事、嫌いなのにしがみ付くの?」
「?」

子供ってわからない
何が言いたいのか
何を感じているのか…
わからない

「ねぇ…弁丸様。」
「…」

次第に空の色が深い闇色に変わりだし、星が一つ、二つと輝きだすのを見ながらも
星が現われるのと同じように一つ、二つと呟きだす

「“俺ら”は所詮…使い捨ての道具だし、陰湿で汚いけど…」

それが自分のあり方で、己が生きる“道”だから

「…」
「仕事に対する“誇り”ぐらいはあるんだよね…」

己の選んだ“道”
例え、当たり前の枠組みで推し量られようとも
幾つもの選択肢の中から選んだものだから

「っ…」
「と、言うわけなんで…仲良くしません?嫌かも知れませんけど…俺が死んだら新しいのが来るんですから〜」
「そのようなこともうすな!!」

え?
幼い子にしては強い眼差しだった

「そなたたちのことをいんしつだのきたないだの…どうぐなどとおもったことはいちどもない!!」

放たれた言葉に目が点になる

「そ、うなんですか…?」
「そうだ!!」

射ぬかれた…
と言うのはこういう事だろうか…
その瞳が偽りでないことは理解できた
そして“馬鹿”なんだってことも

「それがしにはしのびのことはわからん…されどそのようにおもったことはない…そなたはそなただ!かわりなどひとりもいない!いない…っぐす」
「…泣かしちゃいましたね…」

その場にしゃがみこみ涙を拭ってやる
こんな“奴”も居るんだね…
当たり前の枠組みではない見ることはない
馬鹿みたいに真っすぐな…
ふと
見上げた空には星の輝きを引き立てるように輝く月が浮かんでいた
目の前の“存在”とはまるで違う輝きが…
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