その他著権駄文部屋2

□“縁”と輝きと“誓い”
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今日
主君、真田昌幸が討ち死にした
この十数年与えられた“縁(めい)”も…
今、消えた…
さて…
どうしようか




「ゆーきむーらさーま」

縁側に座る主君だった存在の子に声をかけた

「…佐助か」
「忙しかったですね。今日」
「…うむ」
「葬儀やら跡目やらなんやらと…泣く暇も無かったんじゃないです?」
「…父上は涙を見せるのは主君の命が尽きた時だけと…身内とて涙を見せるなと…」
「…」
「そう教えを頂いていたからな…」

小さく呟いた主君だった存在の子は何かを煽った
よく見れば、縁側には酒の器が置いてある

「幸村様…酒飲めましたっけ?」
「いや…父上の好みだった酒を用意すればよかったんだが…中身は水だ」

ご丁寧に器には墨に書かれた文字で『酒』と書かれていた
この方らしいね

「幸村様はこっちの方が好きでしょ?」

後ろに隠していた盆を縁側に置き、横に座った
盆には、こんな日には不釣り合いな月のような饅頭が置いてある

「おお!」

主君だった存在の子は、美味そうにそれを取り、頬張った
…作ったかいがあった

「なぁ…佐助」

幾つかあった饅頭が盆の上から消える頃
主君だった存在の子は小さく己の名を呼んだ

「よかったのか?」
「ん?何が?」
「父上が亡くなって…」
「あぁ。そういえば…よかったの?真田の領を武田に返して?代々続いていたんでしょ?」
「そう、ではない!」

真剣な眼差しを此方に向けた
食べかす付いてる…

「父上が亡くなって…そなた達との“縁”も消えた。武田の…お館様に仕えようと言う我儘も某の一存…。そなた達は好きに選んでもよいのだ…」
「本当…幸村様は熱いよね〜。」

食べかすを拭ってやり、口元を緩ませる

「俺様達は“道具”命があれば従うし、主君が死ねば新たな主君を見つける…ある意味、陰湿で汚い俺様達に選ばせる“権利”を与えてくれたのは真田様じゃなくて貴方だよ。そんな暑苦しくて馬鹿な貴方に惚れ込んだんだよ…俺様達は」
「しかし…給金は減るが…」
「そのためにはどんどん名を上げてもらわないとね♪俺様頑張っちゃうよ〜」
「う、うむ!」
「ま、俺様は別の理由もあるけどね」
「?」

視線を向けた先には明るすぎる月が浮かぶ
あの時
垣間見たのと同じ…
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