その他著権駄文部屋2

□一つの変化・・一つの“希望”・・
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「…お館様…」
「旦那…」

握った拳が震え、目には涙が浮かぶ
唇を噛み締め
今の現状に震えが止まらない
お館様…
甲斐の武田が領主
武田信玄が突然の病に倒れた
上洛半ばの出来事に全ての者が不安や恐怖にかられた…
言葉が出なかった
代わって差し上げたい…
この御方はこの様に倒れる御方ではないのに

「旦那…しっかりしなよ。大将は…あんたに託したんだよ?」
「っ…」

そう託された
某は…
この甲斐の行く末を
されど

「某には…」

無理だ…
若輩な自分に…
偉大な御方の様に

「何言ってんの?!武田の“若き虎”が!」
「こ、わい…のだ…怖いのだ」

甲斐の国を民を全てを守るために
采配を繰り出さねばならぬなど

「お、やかたさまはきっと間違えられたのだ…」
「…」
「きっと…山形殿に伝えよとの…」

あの方ならば
この国を任せられる
某のような者ではなく

「っざけるな!」

胸ぐらを捕まれ
刄の様な視線を向けられる

「お館様はあんたに託したんだよ!傍に居て一番その“心”を受け継いだあんたに!!」
「それ、がしは…」
「旦那にしか…あんたにしかできないんだ!誰でもない…あんたにしかあんたにしか!!」
「…す、まぬ…」

某には…
一筋、頬を流れた
恐怖なのか悲しさなのか
それとも

「っつつ!!」

目に見えた拳
避ける事さえできない

「長ともあろう方が主君に手を上げようとは…何事ですかな?」
「!?」

向けられた拳が目前で止まった
視線の先に映ったのは
全ての感情が籠もった目をした“忍”の姿

「さす…」
「…っ」

“忍”は手を離したかと思うと数歩距離を置き、膝を付いた
その後ろには何時の間に居たのだろう…
配下の忍達とは違う様々な“者”達が同じように膝を付いていた

「そなた達…」
「俺が呼び出しました…」
「!」

配下の忍とは全く違う“者”達…
よほどの事が無いと集まることが無い“者”達…

「忍にあるまじき行為…お許しください。真田様」
「?!」

え?

「勇士及び配下共々…死力を尽くし…お仕えしたい所存にございます」
「っ!」

頭を垂れる“忍”に言葉が濁る
某は…
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