錬金・調合駄文部屋 

□一月八日
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《一月八日》



「…」

息を殺し静かに狙いを定める
木の上のこの位置からなら相手に気付かれる事は無い…

「(幾ら“修業”って言っても本気でやったら痛いと思うんだけど…)ううん、折角頼りにしてくれてるんだし…頑張らないと、あぁ…でもなぁ修業とかよりデートしたいなぁ…買い物とか…うふふ」
「そう言うのを」
「!?」

しまった!
気付いた時には

「隙ありって言うんだよ?知ってた?」

鋭い程の風を切る音が身近に聞こえ
視界が上から下へと変わっていた。

「うっきゃあっ!!」

ドッシーン
自分でも分かるくらいに凄い音がした。
幸い下は茂みがクッション代わりになったけど
それでも痛いものは痛い

「あいたたた…」
「僕の勝ちだね」

視線を声が聞こえた方に向ければ、そこには

「女の子に対して酷いわよ!!」
「“女の子”って歳じゃないでしょ?」

薄ら笑いを浮かべながら、人を小馬鹿にしているルゥ…ルゥリッヒが居た

「まだ若いもん!永遠の二十歳だもん!!」

うがぁーと落ちた態勢のままじだんだを踏めば
冷静なまでの一言

「…ササリナ。くろ…」
「っ!?」

その単語に驚きスカートを押さえ起き上がる

「み、見た?見てないよね?」
「え?何が?あぁ、うん。見てないよ?見てない見てない」
「やっぱり見てるし!!」
「はいはい。そう言う事にして上げるよ。」
「…していらないわよ!」

立ち上がり服に付いた汚れを払う。
その時に、肌が痒かったのを感じたが気にしない事にした。

「あーあ。何で見つかったかなぁ〜。結構自身あったんだけど」
「…君が騒がしいからじゃない?」
「あ!そっか〜なるほど」

う〜んと納得し唸る。
って

「誰が騒がしいのよ!」
「今、まさに、君が。」
「何で区切るのよ!」
「何と無く」
「〜っ!!」

シレッと毎回言ってのかれるので偶の音も出なくなる。
本当に〜

「もう、いいわよ!今の話題はどっかに捨てといて」
「不法投棄は犯罪なんだよ?」
「いいの!自然に還るから!それより今日はどうするの?終わり?」
「ん〜。そうだね…」

悩む彼を見ながらも、今日はもう“修業”はやめにして…
たまにはデートでも…

「いやでも…あたし達付き合ってるとかそうじゃなくて…ちょっとぐらいわ〜」
「…酷い独り言は、流石に医者に掛かった方がいいんじゃないかな?幾ら知識があっても本物じゃないんだし」
「そこまで酷くないわよ!って言うか…今のは忘れてください…」

油断してたら口から言葉が出てたわ。
やっば…
明後日の方を思わず見て反省した。
口にチャックは必須ね。

「聞かなかった事にしてあげるよ。まぁ、今日は終わろうかな」
「じゃあさ…明日…」
「用事があるからあの人の所に行こうかなっと」

サラッと言われて言葉が止まる。
あぁ…
あの人の

「ふーん、そっか…」
「…今、何か言い掛けなかった?」
「え?別に何にもないよ!ちぇっ、買い物付き合ってもらいたかったのに〜。つまんないなぁ〜」
「…僕も多忙だからね」

顔を膨らませれば何時もの様な意地悪そうな笑みを向けられた。

覚えてるわけないよね。
気付かれない様に溜め息を吐いた。
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