捧げモノ&素敵頂きモノ駄文部屋1

□月は失った光を求め涙する
2ページ/2ページ


少しでも自分は進まないと行けない

でないと…


「こんなクエストなら、あんた自らが来る事はないはずだ…」

銀の髪の青年にそう言われ、自分よりも背の高い彼を見上げ言葉を紡ぐ

「あなた達を信用していないわけではないの…族長自らの依頼だし、その場所が一族の神聖な場所だって言われてるから」
「ふん、どうだか…どうせ、仕事が手付かずにでもなったんだろ?」

半ばあきれ気味にそう言われ、ふふっと笑った。
ご名答。
色々在り過ぎて整理したかったの。
でもね

「それだけじゃないの…」
「…」
「切っ掛けが欲しかったの…この異世界に来る理由が…」
「…」

今いる場所とは反対側の方角に剣の刺さっている場所がある。
そこで昔…

「…この場所見たいだな。」

たどり着いた場所は、村の奥から更に奥に行った場所…
そこには、変わった形のオブジェが並び、まるで祭壇のような物があった。

「ここに来た奴らは、大半おかしくなっているそうだな。」
「そうらしいけど…」

見たところ、祭壇のような物はあってもこれといって変わった場所では…


(…エ…イラ)


「えっ?」


(…ノエイラ)


「っ!?」

不意に聞こえた自分の名を呼ぶ声…
この声


(ノエイラ)


「あっ…」

今度ははっきりと聞こえた。
目の前に、大剣を背負った…

「どうして…」

早鐘のように心臓が脈打つ
何故?彼が…
だって…
あなたは


(ノエイラ)


次に名を呼ばれた時、風景が変わった
違う
最初から此処にいた…?
水晶谷あの丘に…


(ノエイラ)


「…っ」

胸の奥が熱くなる
側に行きたい
触れたい抱き締めたい
本音を吐き出してしまいたい…


(君はずるいね)


「えっ…」


(どうして君だけ)


(どうして…君だけ)


「!!?」

ゴボリと彼は口から血を吐きだす
彼愛用のレザークライスが真っ赤に染まる

怖い
痛い


(痛いよ…怖…い…どうして俺だけ…)


「!!」

差し出される血塗れの手…
それに恐怖を感じる


(…酷いね…)


彼は、冷たく笑う


(俺は、こうなのに…君は生きてる…)


「ひっ…」

ずるいね。
声が上ずる…
そうだ…自分はずるいんだ…
あなたが居なくなった時
自分も居なくなれば…


(…ノエイラ)


「…」

彼は冷たく笑う。
そうね…あなたの側に逝けたら…



…もし、私が願ってしまったら…あなたが私を…
…してくれる?



「!?」

不意に浮かんだ言葉…



…受けてやる。
俺もミストルースだからな…


ああ、そうか…
これは…

キィンと金属が跳ね返る音が響く。
自分に向けて振り下ろされた大剣の刃を弾いた音…

(!?)


「そうね。私には“誓い”があるのよ…」

そう、私には…

「…私、どうかしていたみたい…」

一度目を閉じ、呼吸を整える
そうよ…
どうかしていた
次に目を開いた時、恐れも戸惑いもない

「あなたは誰?」


(……)


「黙り?答えなさい!ニセモノ!!」

何かを振り払うように手を横に振る
それは一つ笑うと辺りの景色があの丘でなく、あの一見変わったオブジェのある場所へと姿を変えた。

「ノエイラ!」

後ろで、聞き慣れた声を感じる。

「あいつは!?」

一つ舌打ちが聞こえ、剣を構える音がした。
そちらを見ることなく

「待って」

動こうとする気配を静止すると

「アッシュ、悪いんだけど…あなたの剣、一本貸してくれないかしら?」

私のは、壊れてしまって…
そう言い、愛用のレイピアを見せた。
その刀身は罅が入り欠けていた。

「…」

無言のまま、自分の腰に納まっている双手剣の一本を手渡してくれた。
一言、礼を言い受け取る。
見た目よりも軽い…
そのまま、剣を構える


(き…さまらの魂…食らう…)


それもまた剣を構えた。
しかし、勝負は一瞬


(!!!!)


「…」

それの剣が、こちらを捕える前にそれの喉元を剣が突き刺す


(…な…)


「一つ教えておくわ…」

より深く剣を突き刺し

「彼はあなたみたいに冷たく笑わないの」

何度も、その笑顔で救われたの…
勢い良く剣を引く。
それは、そのまま地面に伏した。
だが、直ぐ様、まばゆいばかりの光が溢れた。

「きゃっ」
「何っ?」

その光のまばゆさに目を奪われたが、光は直ぐ治まり、そこには一見ぬいぐるみを思わせる生き物が自らの長い尾を軸とし、その場に立っていた。

「なんだこいつは?」
「ぽよっ!」

アッシュはその生き物に、もう一本の剣を向ける
生き物は、その拍子に地面に転がった。

「ぽっぽよぉ〜」

小さな体を震わせ、怯える生き物に

「大丈夫よ。彼、目付き悪いけどやさしいから…アッシュ、剣を納めて。」
「…ちっ。」

そう言い。

「あなたは何?」

優しく問う

「ぽよ。おいらは幻のマナ、ファウスタスだぽよ。あいつに閉じ込められて悪いことしてしまったんだぽよぉ」
「マナ?」

聞き慣れない言葉

「…ユアンから聞いたことがある。この世界の成立からいる、錬金術士共に力を与える存在だと」
「お兄さんの言うとおりだぽよ。大体そんな感じだぽよ。」

どこか抜けた話し方にクスリと笑う。

「錬金術士か…」

何かを思いつき

「なら、私達に着いてくる?知り合いに錬金術士がいるから」
「ぽよ!」
「…いいのか?ノエイラ」

アッシュが何を言いたいかわかった。
でも、その事には触れず

「この子は悪くないわ。それに、またあんなことする羽目になったら可哀相だし…」

あなたが良ければ来る?
ファウスタスはそれに一言ぽよと答えた。

「なら、行きましょうか。族長にも報告しないといけないし。それと…」

握っていた剣を持ち主に返すと

「ありがとう、アッシュ。」

「フンッ。」
「なら、行きましょうか。」

そのぶっきら棒な態度に思わず苦笑する。
それから、ここまできた道をまた戻る。
青年の背中を見ながら、マナと名乗った生き物を眺めながらも
あのニセモノが言った言葉を思い出す。
あれは、本当に嘘だった?あれは本当にニセモノだった?

「ノエイラ?」
「…」

何時の間にか歩みが止まっていたようで、何時もながらの声だけれど、何処か心配してる声が聞こえてきた。

「…ねぇ、悪いけど先に報告に行ってくれない?」
「…」
「少し、此処の景色を見ていたいの…」

当分来れないと思うし…

「…あぁ。」
「ありがとう」

それに微笑み、その背を見送る。
しばらくしてその背が、見えなくなると。
景色を眺めた。
でも、考えてることは違う。

「…っ」

あれは、本当の事であれはニセモノではなかったのかもしれない。
彼は私を恨んでる?
そうかもしれない…私は…

「?」

不意に、後ろから抱き留められる。
その感じは誰だかすぐにわかった。
そして、瞳を覆われる。

「アッシュ?」
「…今は…俺しか居ない…」
「…」

頬を一筋何かが伝う。
体が震える。
我慢していたものが溢れる…止まらない

「…男って…ずるいね…」

ずるいね…
涙がボロボロと流れた。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ