その他著権駄文部屋3
□刻んだ“モノ”、刻まれた“モノ”
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「…」
私に不満か?
その投げ掛けられた言葉に
あいつの決めたことに
文句はねぇよ
そう口にすると
潰された目が
ズキリ
と
痛む
目の前に居る男は
俺の眼を
俺達の築き上げた“会社”を
一度は壊した男だ
その時の屈辱も
眼を潰された痛みも
忘れる訳が無いし
忘れる理由もない
だが
強襲をぶちこんで
やり返してやったから
そういう意味では
満足はしている
そんな男が
何故
目の前に居るのか
簡単だ
再起を進行中の“会社”に就職に来たのだ
まさかの
就職
前上司はどうした?
流石に面接を受けに来た時
あいつは聞いた
元々契約社員だったからな
辞表を出してきた
と
動機も軽いな
この大人
簡単に割りきれるものなのか
それを受理した
この男の前上司もだが
紆余曲折
何だかんだで
この男は
今では同僚。
だが
それに不満を抱く者は確かに居る
僭越ながら代表を上げるなら
バカ弟だ
俺のことを考えてくれるなら
其処は飲み込んで欲しい所なんだが
何分
真っ直ぐで情に厚い分
不満等があれば直ぐに声を出す
自分の納得いく結果迄だ
今回の場合は
そんな弟に前回の事もあって
不満に持つものが続いており
それを諫める役目をあいつから受け
文字通り諫めにいったら
弟は
兄貴はいいのか!
と
半ギレされてしまい
兄貴が良いなら許す!
とまで言われ
それに続いて不満を持つもの達も
それなら自分達も!
と
声を上げたものだから
結局は
張遼を呼び出す羽目になり
今に至る訳である
「…君の弟は情に厚いがそれが弱点だな」
「…まぁな。」
「君は逆に割り切りすぎるのが弱点だな」
「あ?」
納得して
頷いた矢先の言葉に
眉をしかめる
それの何が弱点だ?
と
問おうとして
眼
と
張遼は促すように
指差す
未だに傷の癒えない潰れた眼
眼帯でもするべきか
と
悩んでいる所だ
「割りきる事は良いことだが物事には感情的になるのも必須だ」
そう言うものは
溜め込めば
溜め込む程
どろどろに貼り付いて
取れなくなる
と
口を緩ませる
それをみて
ズキリ
と
無くなった筈の眼が痛む
「…つまりあんたは何が言いたいんだ?」
「聡い君の割りには演技は下手だな」
私は真剣にあの方の下で働きたい
つまり君達と共に働きたい
「憂いや怨恨は出来るだけ清算しておきたい」
私の眼
潰しても構わない
その言葉と
真剣な眼差しに
ズキリ
と
眼が痛む
確かに
俺がそうすれば
不満を持つ者も納得するだろうし
あいつも俺に
この男がそれを望んで居ると言うことを気づいて
判断を俺に委ねて来ているのだから
望む通りにするのも良いかもしれない
「まぁ…あんたが言いたいのは臨機応変に対応しろってことだよな?」
「そうだ」
だったら
そうさせて貰う
真剣な眼差しを同じように向ける
武器は無いから
指で潰す
力を入れれば簡単だ
手を張遼の頬へと伸ばす
本人は既に覚悟の上か
微動だにする様子はない
眼が痛む
「…」
…ぶふっ
思わず吹き出す
笑いが溢れるのを止めることはできず
くく
と
喉を鳴らす
流石に
張遼は面を食らったような顔をして
夏候惇?
と
口にする
「やめとくわ」
「え?」
「あんたのきれいな眼潰すなんて勿体無いからな」
にぃ
と
口許を緩め
手を離す
キョトンとして居る張遼を見つめても
眼は痛まない
潰れた眼に最後に映ったのは
敵としての“張遼”
冷たく
恐ろしく
それでいて
美しすぎた
怒りよりも
痛みよりも
その美しさが眼から離れず
やり返したいよりも
また見たいと思う程に
「あんたを使い物にならなくしたら俺があいつに怒られるしなー」
それに
あいつの言葉に意義申し立てる奴何て本当は居ねぇんだぜ?
単純にバカ弟の我が儘が爆発してただけ
何だかんだで弟は慕われてるからなー
と
けらけらと
「それとも…」
あんたは俺との関係を割りきってないってか?
あいつに惚れ込んだって割りには
俺も
惚れ込んで貰ってるって
思っても良いことだよな?
と
本心を飲み込んで
冗談めかしに
笑いかければ
「…っ」
其処には
顔を赤らめている
張遼
…。
「え?」
何故か
自分も赤くなった
※三国創傑伝のブルーウィングの二人
この二人が好き( ´∀`)