その他著権駄文部屋1

□“彼”が同族殺しになった“理由(わけ)”
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『その彼女を安全な場所へ移動させた後、奴らを駆逐しよう』
「・・・わかった」

その指示に従い
腕に抱える人間の女を違う場所へと移動させようと
歩き出す
雨が降る
長時間身体を冷やすと
人間は風邪と言う“病”を伴うと聞いた
風雨の当たらぬ場所がいいだろう
そう考えていると
気を失っていた筈の人間の女が目を開けた
意識を取り戻したのか
なら
自ら動いてもらう方が
手間は掛からない
だが

「っ!!!!!」

人間の女は目を覚ました途端
悲鳴を上げた
顔を青ざめさせ
暴れる
己の姿を見て
“奴ら”と間違え悲鳴を上げられたことは
何度もあったが
此処まで怯え
暴れられると
流石に
落としそうになる
流石に
それは困る
仕方なく
その場に
ゆっくりと
降ろす
だが
人間の女は逃げる己から訳ではなかった
ただ
その場で
ガタガタと震え
何かを呟きながら
驚愕の表情をしていた

『うむ・・先程の事で困惑しているのだろう。どうにか彼女を落ち着かせた方がいい。』

そう指示を受けたが
どうしろというのか
無言で
その意思を伝えれば

『私ではさらに困惑させると思うからね。なにせ、ベルトだし』
「・・・・。」

その応えに
プログラムの中を検索する
だが
該当する物は無い
それはそうだ
奴らを駆逐する事が
命令であり
人間を守る事であり
困惑した人間の気を落ち着かせる
などというプログラムは
最初から無い
考えている間にも
奴らは
人間を襲う
一刻の猶予も許されない
そう考え
ふと
その人間の女が
引っ切り無しに
自らの手を気にしているのに気づいた

「・・・・。」

その人間の女の手を
静かに掴む
人間の女は
身体をビクつかせたが
漸く気づいたのか
此方を見た

「わた・・わたしの・・」
「・・・・。」

何と言っていいか
分からなかった
だから
その手に力を込めた
お前の手は
消えていない
お前も
消えていない
そう
分かるように
それが漸く理解できたのか
人間の女は

「・・・・!」

微笑んだ
ただ
静かに

「あり・・がとう・・」

そう
呟いて
安心したのか
人間の女は再び気を失った
倒れそうになる身体を慌てて支えた

『どうしたのかね?プロトドライブ?』
「・・・・」

そう言われ
言葉を濁す
分からない
だが
何故か
胸の辺りが
コアの部分が
熱い
この人間の女の
“今”の顔が
頭から
メモリーから離れない

「・・・・・・」

どうしてか
もう一度
見たいと
思ってしまう
だが
それは叶わないと
分かる
遠くで悲鳴が上がった
“奴ら”が
人間を襲っている
何故か
“奴ら”と同じ
己が
人間のような“感情”を抱くなんて

「・・・・」

人間の女を抱きかかえ
直ぐにその場を移動する
風雨の防げる適当な場所を見つけると
その身体を
静かに下ろし

「・・・・」

その手に軽く触れた
気を失っているのは分かっている
だから
期待はしない
だが
望んでしまう

「・・・・」

静かに触れていた手を離し
立ち上がると
悲鳴の上がった方へと走り出した
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