その他著権駄文部屋3

□その女の欲(ねがい)
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“紅”く染まった手

不愉快に感じたことはない

されど

恍惚に感じたこともない

ただ

たった一つ・・

望むものがあるだけだから

私は





その場に女の悲鳴が響く
男の刄は目的の男に届かず、その場に胴を二つ切り離されて痙攣を繰り返す
只、自分は侮蔑を込めた瞳でその光景を見ながらも
武器に付いた血を払う
顔と手に血が付いた不愉快だ。
全てにおいての発端は戦明けの宴だった
暴君は女と酒好き・・
この二言で全て理解できるだろう
そして“暴君”には必ずつきものだ
自らの命を狙おうとする者がいることも

「た、太師様をき、傷つけようなどとっ!!」

鯰が五月蝿い
只でさえ不愉快というものを・・

「高順、陳宮・・。すまないが、片付ける手はずを」
「「はっ」」

呟くように命令をだせば
すかさず兵が駆けつけその場を押さえてゆく
切り捨てた男を片付け、物を片付け、生き残ったものを取り押さえ

「ひ、人殺し・・」

兵に抑えられた暗殺者の一人が呟く
そちらに目を向ければ

「返せ!!!あのヒトを!!!!かえせぇ!!!!」

・・・・

「きっ貴様!!貂蝉将軍に!!」

抑える兵が罵声を浴びせる女を叱咤する
それでも女はやめない
あぁ・・・

「貴様!!だま「離してやれ」
「はっ?」
「離せといった」

兵は驚きながらも女を離す、女はその場に崩れ憎悪の目を込めて此方を睨み全てを恨む

「あんたがあんたたちがいなければぁ・・・」
「ふっ・・・」

馬鹿馬鹿しい
兵の持つ小刀を一本その女の前に滑らせる
女は驚いたように目を見開かせ此方を見上げた

「お前の“男”だったようだな」
「っううううう」
「お前は何故其処で泣いている?」

女の側にまで歩み寄り膝をつく

「うぅぅぅぅ、あんたなんかあんたなんかあ!!!!!」
「どうしてお前は泣き叫ぶ?」
「!」

自分にとって大事なものの仇が側に居て、そして唯一それを倒せる物がある
なのに

「何故、お前は泣き叫ぶ?」
「うっううう」
「変わりに答えてやろうか?」

立ち上がり見下ろすと

「お前にとって死んだあの男はその程度だからだ。」
「!」

全てにおいて大切ならば
分りきった無謀な策を止めただろう
討ち取られれば自ら命を絶つだろう
全てを投げ捨てその仇を討つだろう

「全てにおいて仇を討てる条件が揃っていたのにも係わらず、お前は只泣き崩れているだけだった。所詮死んだ男はその程度・・殺されようがお前にとってはその程度。違うか?」
「っ!!!!!!」

女は泣きじゃくり喚きちらす

「ほら、また泣く。やはりその程度だ。お前は自分では何も出来ない・・只、待つことだけを望む女だ」

侮蔑を込めて笑みを浮かべ

「連れて行け」

と命令を出す
直ぐ様その場に膝を付き

「太師様の御前を汚した事をお詫びします」

元々、お前の道楽加減で此方は不愉快な思いをしているんだがな
今は彼奴に頭を下げる必要がある

「よい。貂蝉将軍。良い見世物だったぞ」
「・・・・・はっ」

言動に苛立ちを覚える
この鰌め

「しかし、折角の宴が興ざめしてしまったわ・・。」
「・・・」
「どうじゃ?先程の者の変わりにワシに酒を注がぬか?」
「・・・・」
「太師様!!お言葉ですが将軍はその様な事を!!」
「黙れ。徐晃」
「うっ・・」
「どうじゃ?」

・・・・・・。

「恐れながら申し上げます。太師様」

先程の状況を思い出す
もし
全てにおいて討つ事の出来る条件が揃ったのならば
例え、この身を討ち抜かれ様とも
全てにおいて奪われようとも

「もし、私が先程の者の立場ならば・・涙を流すことは致しませぬ」

泣く事も
待つことも
絶対にしない
そんな暇があるならば

「そんな暇があるのならば噛み千切る事ぐらいは致します」

その命尽きる前
足掻く
足掻いて足掻いて手に入れる
たった一つ欲しい物の為に

「ふ・・ふははは。よい、さがれ」
「では、失礼致します」

女狐が
そんな台詞を聞きながらもその場を後にした
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