▽白薔薇の園“紫鳳の階”▽
□【7】霊 廟
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―――全ての始まりは・・・・・そう2年前のあの日、
―――“彼”がバレンヌ皇帝に即位してから ちょうど15年が経過したかどうかの時期、
―――あの日、彼は1人 帝都郊外の原野で馬を走らせていた・・・・。
―――“紅い除幕式”事件から遡ること2年、
―――帝国暦335年7月のある日、
「・・・ふぅっ・・・」
ひとしきり馬を走らせてから 彼は額に滲んできた汗を拭いつつ、何気に自分の周囲を見渡した。
馬上の“彼”が位置しているのは、この原野で頭ひとつ出ている小高い丘の上。
西側に見える森以外は全て緑の大海。南側には 微かにキラキラと光る水面、ソーモンの方に向かって流れている小川の影がぼんやりと地平線上に浮き上がっている。
帝都周辺では最近少なくなりつつある 古い半島の原風景。
歴代皇帝もよくお忍びで遠乗りに来ていたという この地に、 彼も来ることを好んだ。
もっとも 今回で4回目というものではあったが。
(・・・アバロンよりも ここの風の方が涼しくて気持ちいいな・・・・)
彼の名はフリードリヒ。
世界の過半を支配するバレンヌ帝国第19代皇帝、若き絶対君主だった。
父は先帝サジタリウス、叔母は“赤髪の女将軍”ディアネイラ。祖父は17代ベリサリウス帝。
そして曾祖父はバレンヌ中興の英主と言われた16代“国父”ポール帝である。
いわばフリードリヒは、ポール王朝4代目の皇帝でもあるのだ。
「・・・気持ちが昂るなぁ 」
思わず1人ごちるフリードリヒ。
無理もない。
彼が少年期に即位して15年が経過していたが、それまではバレンヌ皇帝といっても名分だけの存在。
実権は叔母ディアネイラが後見として掌握していたのが現実だった。
だがフリードリヒもはや25歳となり、一人前の成人といえる年齢に達したこともあって
つい先日 叔母の口から正式に
“後見役を斥くので、以後はそなたが皇帝として国政を見よ”
という言葉をもらったばかりなのだ。
「 いよいよか・・・いよいよ私の“理想”をこの手で 」
長らく続いてきた叔母による反対派への強権政策を転換し、理想現実の為に帝国の道筋を大きく変える――――
若く熱い血潮が フリードリヒの体中を駆け巡る。
そのせいもあるのだろうか。
今日の遠乗りがとりわけ楽しく感じられるのも―――
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