▽白薔薇の園“紫鳳の階”▽

□【3】錯 綜
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―――ここで時は、少しだけ過去に遡る・・・





―――それは“紅い除幕式"が始まるより少し前、







―――北バレンヌ山岳部の一寒村


―――クラリスの家








―――カチャリ・・・


『・・・御馳走様でした。とても美味しかったわ 』


「 ありがとうございます。こんな有り合わせのものしかなくて 申し訳ないくらいなのに・・・ 」


『 いえいえ、とても美味しい野菜スープでしたよ。こちらこそ 突然顔を出した上に、このようなもてなしまで受けて・・・』


「 勿体無いお言葉でございます・・・ 」











『・・・では、そろそろ 』


「 !! 行かれるのですね・・・・ 」


『 はい。帝都に座する黒い邪気は日に日に大きくなるばかり。おそらく近日中には、帝都に更なる変事が起こるでしょう・・・

その混迷を治め、世界の変革を成し遂げるためにもご子息の“存在と力"は必要なのです・・・・』


「・・・こうなることは分かっていたんです・・・」


『 クラリス殿・・・・』

「 あの子が大きくなるにつれて 夢を見るようになりました。そう、“あの方"の夢を・・・・」


『・・・・・』


「 私達に流れる血の宿命に抗えないと知りつつも、私はあの子に平凡な人生を歩んでほしかった・・・。


それが 愚かな母のはかない願望と悟りつつも・・・」


『・・・・わかりますよ、貴女の想い・・・』


「 オアイーブ様・・・・」








―――ガタンッ



―――ギイイッ・・・



「あ、あのっ・・・」


『 ?? 』


「 息子に逢ったら伝えてください・・・母はあなたを本当に愛していたと・・・ 」


『・・・残られるのですか、この村に・・・・・これから何が起こるかも気付いていながら・・・・』


「 ・・・はい、この村この家は私とオイゲンにとって唯一の“居場所"ですから・・・」



『 先程のお言葉、必ずご子息に伝えましょう・・・必ず・・・』

「 ありがとうございます、オアイーブ様・・・」

『 では、いと健やかに・・・・ 』






――― パタン・・・








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