戯れ言

□誕生日プレゼントは黒い鯉のぼり
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桜も散って、暖かくなってきた今日この頃。
10連休とも騒がれている今年のGWだが、正直そんなもんどうだっていい。
いや、俺だってせっかくの黄金週間なんだからのんびりだらだら過ごしたい訳よ。

「あー、めんどい。忘れたフリして今年はスルーすっかなぁ」

去年はおめでとうつったら家賃払ってもらえたからラッキーだったけど、今は家賃滞納してねぇしな…。
それにこないだドタキャンしてから連絡こねぇし。
大体自分だって仕事だなんだって平気ですっぽかすくせに、どこまで俺様なんだか。

あー、考えてたらムカついてきた。
やっぱスルーだ、スルー。


「銀ちゃん、お腹減ったアル」

「おめーは酢こんぶでも食ってろ」

「死ねよ、天パ。私卵かけご飯が食べたいネ」

「ババァか新八んとこ行ってこい」

「………そんなんだから金づるにも逃げられるネ」

「…………」

金づるって…。
いや、まぁ確かにたまに家賃とか払ってもらってるけど…。
ちょ、酢こんぶの箱投げるな。

「銀ちゃん」

「…なんだよ」

「お腹減った」


…………。

いや、そりゃドタキャンは悪かったけど、あいつだって…。
神楽ちゃーん、頼むからそんな目で見ないで。
俺?俺が悪いの?




「へいへい、わーったよ。金づる呼べばいーんだろ」

「早く電話するネ」


にっこりと満足げに笑う神楽の手には小さな鯉のぼりの旗。
おまけに小さなリボンまでついている。

「なんだそれ…」

「駄菓子屋のばぁちゃんに貰ったアル。しょうがないから銀ちゃんにあげるネ」

余計なお世話だっつーの。
てか、今どきそんなもん貰って喜ぶ大人はいないからね。
お前何いいことしたみたいな顔してんの。

ったく、しょうがねーな。
どうせ今頃そわそわしてんだろうし、優しい銀さんが今年も祝ってやるか。
神楽の頭をくしゃりと撫で、受話器を手に取った。



『誕生日プレゼントは黒い鯉のぼり』

 

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