戯れ言

□バスケットコートで輝く青春
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走る、叫ぶ、笑う。

そんな毎日が楽しくて。




「銀時ッ、決めろよ!!」

「へいへい」


土方からのパスを受け、リングに叩きつけるように押し込まれたボールは、ネットを通り抜け床に落ちた。


「うし、絶好調」


31対19で12点差。
もちろん、優勢なのは銀時と土方の率いるチームだ。
部内の練習のための簡単な紅白戦だが、勝てば学食のただ券が貰える。
育ち盛りの高校生には堪らない代物だ。


「次スリー決めて更に点差広げるぞ」

右手のリストバンドで汗を拭きながら銀時に声をかけるが、どうやら違う事に意識が集中しているらしい。

「焼き肉定食とハンバーグ定食どっちにしようかなー。でも、唐揚げ定食もいいなー」

「お前もう決めてんのかよ」

「おう。高杉来てないし、今日は余裕だろ」

近くに置いてあったペットボトルの水を取って口に含む。
喉を通ってじわりと広がった冷たさが火照った体にちょうどよく、思わずジジくさい声が出た。


「なんだその声」

「うっさい」


キャップを閉め、壁の方に転がしたと同時に背中にボールの衝撃。


「まだ試合は終わってませんぜ、旦那」
「そうだぞ、銀時。俺だってお妙さんにただ券とってこいって言われてるんだからな」

ボールはゴールに入れるもんであって人の背中にぶつけるものじゃねーんだぞコノヤローと言いつつ振り返れば、なんとも痛々しい青痣を見つけ思わず黙る。

「近藤さん、それ、」

隣の土方も思わず口を開いた。

「あぁ、これ?いやぁ、まいったな。愛の証ってヤツ?」

まったくもっておめでたい頭に拍手を送りつつも、呆れてため息がでるのは仕方ない事だ。
いい加減学習しろよ、ゴリラ。

「世の中は諦めが肝心っていうだろ。お前そろそろマジでお妙に殺されんぞ。…ま、なんにせよただ券は俺の物だから。」

「12点差くらい直ぐにひっくり返してやりまさァ」

「できるもんならやってみやがれ」

もう、残り時間も数分だし次スリー決めれば確実だろう。


それに、


「よし、銀時いくぞ」

「足ひっぱんなよ、土方クン」

「誰に言ってんだてめぇ」

強く握った拳をこつんとぶつけ合う。


信頼できる相棒がいるのに負ける訳がない。


「うっし、待ってろよー。俺のハンバーグ定食」

「食いもんばっかだな、お前」


(お妙さーん待ってて下さい!この近藤があなたのために全力を尽くします!!)
暑苦しい叫び声をBGMにボールをひたすら追いかける。


そんな毎日が日常で。
そんな毎日が心地いい。


そんな毎日が

青春の日々。



(土方は焼肉定食な。そんで俺に半分くれ)(なんでだよ)

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