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□日向恵の妄想
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「へぇ…、ずいぶん壮大な夢ねぇ」

向かいに座った雅が、そんな恵を眺めて相づちを打つ。
彼女と話しをするには、ゲームに関する多少の知識は必要だ。
雅はそれほど詳しくないが、彼女の夢がいわゆるRPGであることは理解できた。
だとすれば、人物それぞに役割があるはずだ。

「その感じじゃ、日向が魔法使いであたしは剣士でしょ。他の二人は?」

先程の冒険譚を思い返しながら、雅が尋ねる。

「蓮ちゃんがレンジャーで、優斗クンが僧侶、だったかな?」

眉間に小さくシワを寄せて、恵は思い出すように言った。
その配役に、雅が思わず飲みかけた紅茶を吹き出しかけた。

「身軽そうな藤蔵がレンジャーはわかるが…、あの成瀬が聖職者って!」

自他共に認めるスケベで大の女の子好きが、まさかの僧侶。
その恐ろしい背徳ぶりに、雅は目尻に涙を滲ませて爆笑した。

「で、旅の目的とかはあったの?」

軽く腹筋が痛くなるまで笑ってから、指先で涙を拭いながら雅が言った。

「夢だから、そこまではわからないのだ」

ケーキを一口運んだフォークを口元に当てたまま、恵が小さく首を傾げる。

「でも、…――」



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