小説置場
□紅い月
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白い建物の一室でばたばたしていた。
「患者さんがいなくなりました!」
「探して!皆手分けして!」
看護師があちこちみてはしる。
一人の青年も心配そうにあたりを探す。
「亜莉子…何処にいっちまったんだ…」
辺りを夕闇が包み込む時刻。
何処かの高校だろうか…もう生徒はほとんどおらず校門もしまっていた。
ある教室で病衣をきた少女が眠っていた。
深い深い眠りに。
そこに灰色ローブをきた青年があらわれた。ローブを目深にかぶり口元しか見えない。口は裂けているのではないかとおもうほどに大きい。
静かに少女に近付き、そっと頬を撫でた。
「おっきくなったね…僕らのアリス。こんな役割でさえなければ拐ってしまうのに」
しかしと青年は考える。こんな状況だからこそアリスは僕らを呼んだのだと。
僕は僕の役割を果たさなければならない。
「だから…僕は君を殺すかもしれないよ…ただでさえ羨ましく思っていたしね」
いつのまにか現れた白いウサギ…血塗れの。
「アリスガホシイ…」
フゥーっと青年が威嚇すれば掻き消えた。
「そんなに弱って…」
少し憐れに思ったが気をもちなおして、アリスの側に向き直した。
「さあアリスシロウサギを追いかけよう」