作品置き場

□紅、匂ふ。
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あかい、紅い、雨がふる。

吹き出した紅。

赤い水溜まり。


どうしてこうなってしまったのか。


倒れていく仲間達。


血にまみれていくあたし。

目の前の残酷な魔族。


「皆さん、息絶えたようですね」


むしろ、当然だと言いたげに微笑み、あたしに手を伸ばした。


「次は貴女の番です」


こんな時でもにっこり微笑をうかべる男だとわかっていたけど、現実につきつけられ、きりきりと胸が痛んだ。

ガウリィ、ゼル、アメリア。


ふるふると身体が震える。

「どうなさいました?こないのなら僕からいきますよ」

勝てるかしら…こんなに手の内をしられているのに…でも、諦めたら、そこで負けてしまう。

きっ、と瞳を見据えて


「行くわよ、ゼロス」


あたしは思いっきり黒い刃をつきつけた。

一瞬手応えがあった…



けど、次の瞬間。


「美味しかったですよ、貴女の苦痛は」


あたしの身体には黒い錐がいくつも貫かれていた。


「意識は最期まで保てるようにしてさしあげます」


「く…はっ…」

口から溢れる血が、どばっとはきだされる。

「ゼロス…あんた…悪趣味ね…」


「僕も久しぶりに痛みとやらをかんじましたから、お礼、ですよ」


「はぁ…はっ…おれいだなんて、どこまで…ふざ、けてるの…よ…」


息が、きれる。


「あ、んたの…目的、は…あたしだ、けの、はず、なのに、みん…な、まで…」

それをきいたゼロスは今までにみたことがない目を見開いた笑顔で艶染と微笑んだ…

「障害は取り除かせて頂きました。それに…貴女の最期は僕だけのモノにしたいじゃないですか」


「はっ?」




何を…血の気が一気にひけた。こいつ…そのためだけに皆を?


「怒っちゃいました?あのお方の呪文を唱えさせる為とかおもいました?それなら皆さんまだ死んでないと思いますよ。僕は僕の望みを叶えるためにきたんですよ。このままだと僕、こわれちゃいそうですから」


「意味が解らないってかおしてますね。貴女を僕だけのモノにしたくて…貴女に一番似合う赤色の舞台をよういしました。僕だけの空間で貴女はそのまま紅い花を半永久的に咲かせて、僕が滅びる日まで僕に貫かれたままです。」


ぞっとするような事を聞いた瞬間、あたしは氷に閉ざされた…



――紫の闇に捕まった紅い花は、その主が戻るまで氷づけになり、主がもどれば、主に幾度と貫かれ、苦痛にさいなまれ続ける。

紅、匂ふ。血の狂宴―――

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