投稿作な部屋
□双色の奇蹟
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サラは最後の言葉を紡ぐことなく、しゅんと項垂れる。
紡いでしまったら、それは認めたと同じこと。
仮定とはいえ、サラにはそれを認めることが怖かった。
きつく唇を引き結んでいるサラを、カイトは再び優しく手のひらでそっと撫でる。
「よく、考えてくれたな」
視線を仰げば、長めの艶やかな前髪の間から、そっと細められた双眸が覗いていた。
その瞳はやはり彼の名前を連想させるよう。
夜のような色を湛えているというのに、何もかもを包み込むような温かさを滲ませている。
(――ああ。今日はカイトに助けてもらいっぱなしだな)
つい昨日、出会ったばかりだというのに。
それなのに、あれだけちょっかいを出しあって、いろんなことを言い合って、そして助けられて――気付けばサラの心は、カイトの存在をすっかり受け入れていた。
こんなことって、あるんだな。
今まで数えきれない精霊と出会ったけど、こんなことは初めてだ。
得体の知れない、けれど言いようのない温かさがサラの胸の内でほころんでゆく。
表情の明るくなったサラの顔を見つめると、カイトは無邪気っぽく、にっと微笑む。
「そうと決まれば、まずは行動あるのみだ」
そう言うと彼は、作業机の上に置かれている月の石を見つめるのだった。
「こいつからシャロンのことを聞き出そう」