Go For It!!

□第六話・悲しみの先にある物を…
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―風に揺れる漆黒の髪。

色素の薄い瞳が、悲しそうに細められる。

白い陶器のような肌に、所々に土が付着している。

華奢な身体には似つかわしくない、刀が握られており、その刃には、血が付いていた。

その手に持った刀を見下ろし、少年は唇を噛み締めた。


―これが、戦いというものだよ…


そう言って、死んだ人の姿を少年−歩は見遣った。

さっきまで息をしていた人は、もう生きているという証はない。

半分開かれた瞳は、歩に感情の篭らない眼差しを向けていた。

考えや信じるものが違うだけなのに、何故、争わなければならないのだろう。

「歩」

背後からの声にも、歩は振り向かない。

「…満足か」

掠れた声。

小さな肩が、微かに震えている様を背後から声を掛けた端正な顔をした男は、目を細めた。

「これで、満足か」

「…いや。だって、君は、君自身の手で、そいつを殺してない」

「五月蝿い。俺が殺したのと同じだろっ」

「自滅だよ。全く、馬鹿な奴だよね」

はぁっと溜息をつき、そう言う男−イツキは、肩を竦めた。

「ふざけるな!」

イツキの胸倉を掴み、歩は怒鳴った。

「何故だ!何故、争いを起こさせた!」

「嫌だなー、僕は、歩のためにやったんだよ?」

「…っ」

胸倉を掴む歩の手を、逆に背中に捻る。

いきなりの事に、歩の手から刀が零れ落ちた。

「君のためになら、僕は、幾らでも手を汚すよ」

耳元でそう低い声で囁けば、歩の身体が撥ねた。

怯えの表情で、イツキを振り向く歩にイツキは微笑んだ。

何をこの男は言っているのだろう。

「その手を汚さなければ、開けない道もあるんだよ」

歩の手を離し、イツキは笑みは浮かべていてもふざけた様子は全くなかった。

掴まれた手を摩り、落とした刀を拾うと、歩はイツキに鋭い視線を向けた。

「そんな道、俺は御免だ」

乾いた風が二人の間を通り過ぎる。

「歩」

「歩さん!」

険悪な空気が流れる中、二人の女性の声が聞こえた。

青い長い髪を靡かせながら駆け寄るリンは、普段背中に生えている黒い羽は見えない。

その顔は、危機迫る表情だ。

そしてもう一人、猫のような耳と尻尾を揺らしながらリンに少し遅れながら走り寄るリオ。

「…死んだのかい」

歩とイツキの側で倒れている男を見遣り、リンは呟いた。

「歩さん…その血は…」

歩の手に握られている刀を見遣り、リオは瞳を揺らした。

歩は、視線を落とし、三人に背を向けると一人足を引きずるようにして去って行った。

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