Dreams Are Lie

□第七章・傷跡
1ページ/20ページ

 


第七章・傷跡








―母が何かを怒鳴って、騒いでいる。

振り上げた拳に、俺は微動だにせずいた。

殴られるのは、慣れていたし抵抗しても無駄な事だと分かっていた。

それに、母は更に怒り、台所へ消えた後、その手に握られていたのは包丁…

恐怖が背筋を走る。

押し倒され、戸惑いもなく振り降ろされた包丁。

左肩に刃先が刺さる。

母は、満足そうに笑った。

熱さ、痛み、恐怖、何故、何故、何故刺すの?


『あんたが邪魔なのよ!』







―目をあけると、目の前に昴の顔があった。

驚いて、上半身を起こすと昴はバツの悪そうに視線を外した。

「うなされてたから…」

下を見ると、タオルケットがかけられている。

「今日部活はなかったのか?いやに早いな」

少し、気恥ずかしかったから話をずらした。

昴を待っているうちに、どうやら眠ってしまったらしい。

でも…何故今になってあんな夢を見たんだろう…

「いきなり大雨が降ってさ、今日は筋トレで終わったんだ」

「そうか…腹減ったか?減ってんなら作るけど」

あの夢を見たせいか、少し気分が悪い。

「いや、まだいいよ」

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ