STRAY CAT

□第六部・信頼
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―もう、誰も巻き込みたくなかった。

もう、誰も傷つけたくなかった。

だから、俺は一人を選んだ。

なのに、何故お前は俺の傍に居ようとするんだ。

まるで、振り払っても振り払ってもくっついて来た、今は居ないあいつのように・・・













―不思議な色合いの髪を靡かせながら、シャオは大股で歩いていた。

幼い顔立ちながらもその瞳は冷たい光を宿し、来るものを全て払いのけそうな気さえする。

整った眉を不機嫌そうに顰めている。

その理由は、後ろから付いてくる奴のせいだ。

覚りと呼ばれる妖怪で、人の心の中を読めるという。

黒いボロボロの帽子に、黒いロングコート。


変質者に見られても可笑しくない奴に後を付けられ、しかもそいつが一番会いたくない奴で、シャオは舌打ちをした。

「シャオ〜待ってくれよぉ」

「…っ」

腕を掴まれ、強制的に止められたシャオは、覚りを睨みあげた。

何故、毎回毎回人間界に来ては、こいつに纏わりつかれなければならない。

あの日、初めて会った時から、既に一か月が経とうとしている。

「あっ、今うざいと思っただぁな!?」

「思ったら悪いか」

覚りには嘘は通用しない。
思った事を全てが奴にはわかってしまうのだ。

「大体、何で俺に付きまとうんだよ!」

掴まれた腕を振り払い、シャオは怒りを隠さずに怒鳴った。

「んー…何でだろうなぁ…」

「てめぇ、俺をなめてんのかっ」

「いやー、それよりシャオよぉ、お前ぇ、やっと俺の目を見てくれるようになったなぁ」


「あほか!!」

からからと笑う覚りに、シャオは赤くした顔を背けてまた歩き出した。

話をずらされた事に気付かないシャオに、覚りは一人笑いをこらえていた。

「理由かぁ…そりゃ、お前ぇがあんまりにも危なっかしいからに決まってるだぁね」

帽子を深く被り、前を歩くシャオの背を覚りは何とも言えない表情で見つめた。

「誰かがお前ぇの隣に居ねぇと、お前ぇ、喰われちまうぞ」
















―シャオが人間界に来たのは、ある依頼を受けたからだ。

内容は簡単なものだった。

人間が死神と手を組んで、悪さをしているので、それを止め、その人間と死神を抹殺してほしいという事だ。

その悪さというのは、シャオは聞かなかった。

興味もなかったし、それを聞いたところで依頼をこなすのに必要のないことだったからだ。

「ここか…」

くいっと顔をあげ、目の前の大きな建物を見上げる。

丈夫そうな門が固く閉じられ、玄関までは無駄に長い道が伸びている。

道の真ん中には噴水があり、きちんと整えられた木々が回りを囲む。

この中に、死神と手を組んでいる人間が住んでいるようだ。

まずは、中に入り、真意を確かめる。

「どうやって入るだぁね」

いきなりの背後からの声に、シャオは驚いて飛び退いた。

「ってめぇ!まじで一回殺すぞ!」

「殺せるならなぁ。っで、どうやって侵入するつもりだぁ?」

「うっせー!!てめぇには関係ねぇだろ!
とっとと消えろ!!」

「うるさいのはどっちだぁ?」

「…っ!!」

周りを見渡し、シャオは慌てて口を閉ざした。

こいつの存在は、周りには見えていない。

いや、見えなくさせていると言った方がただしいかもしれないが…

大きく息を吸い、シャオは冷静さを取り戻そうとした。


 

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