RED MOON
□第二夜・仲間
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今度は無事に運び、ほっと一安心して、ナルシアはマットの方へ視線を向けた。
凄い形相でラッシュと言う若者を睨みつけている。
周りの客も静かになった。
「あのラッシュが帰って来た」
ナルシアの近くに居た客がボソリと呟いた。
カウンターから出て、マットはラッシュの前に移動した。
「何しに帰ってきやがったんだ!この馬鹿息子!」
「んだよ!3年振りに帰って来た息子にひでーじゃんかよ!」
「親子の縁は切ったはずだ!人様に迷惑かける息子なんざ、こっちから願い下げだってんだ!」
「うっせーな!だから母さんにも逃げられたんだよ!馬鹿親父」
「てめー!もう我慢ならねー!」
ガッとラッシュの胸ぐらを掴み、今にも殴りあいに発展しそうな緊迫した空気。
「人殺しが…」
そのマットの言葉を聞いた瞬間、ラッシュは弾かれたように動き、マットの胸ぐらを掴み返した。
無言の攻防。
殴ろうと両者が振り上げた瞬間、何処からかオカリナの音色が聞こえ始めた。
その音はあまりにも繊細で、二人ならず客達までもがその音色に聞きいった。
オカリナを吹いているのは、ナルシアであった。
少年の奏でる音に、マットとラッシュの怒りは何処かに消えてなくなっていた。
それほどまでに、綺麗な音だった。
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