Dreams Are Lie

□第十三章・勘違い
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暫くその有希の姿に見取れてると、有希が時計を指差す。

「遅刻するぞ」

「やっば!じゃあ、行ってきます!」

「あぁ、後でな」

慌てて椅子から立ち上がる俺を笑い、有希はひらひらと手を振る。

鞄を肩に掛けて、玄関に向かおうとしたけど言い忘れてた事を思い出して、有希の髪に触れた。

俺を見上げる有希に、真剣な目で言う。

「後藤には気を付けろよな!あんまり近付かせんなよ!」

きょとん、と俺を見ていた有希の顔が赤くなる。

「ば、馬鹿!早く行け!」

俺の手を払いのけ、怒鳴る有希にもう一度念を押して、俺は学校に向かった。

朝練の時は何時も不安になる。

毎朝毎朝、後藤は有希を迎えに来るし、折角の有希との休日も後藤が入って来る。

俺が居ない時の事が不安で堪らない。

「有希もうちの部に入れちまうか…」

有希だったら、レギュラーも夢じゃない!

今度、誘ってみよう。

多分、望みは叶わないだろうけど…















―朝練が終わり、教室に戻ると有希がクラスの奴らと話しをしていた。

少し前までは、絶対に見なかった光景だ。

だけど、最近有希の周りにあった壁が薄れたせいか、クラスの輪に溶け込んでいる姿を見る。

前と比べて、笑うようになったし、柔らかくなった。

それは良いんだけど、無防備にされるとこっちがはらはらする。

「昴」

有希の声に、顔を上げれば、笑顔でお疲れと言ってくれた。

それは、反則だろ…

「何話してたんだ?」

「あっ、昴からも頼んでくれよー」

有希の席に近付いた俺に、クラスメートが手を合わせる。

「何を?」

「羽山に、今度の球技大会で、バスケに入って欲しいんだ!」

「だから、俺はドッジボールに入れられたって言ったろ?」

決めたのは、そっちじゃん。

頭を掻きながら、有希が困ったように言う。

「一人怪我しちまって、人数が足りないんだよー」

「なら、他の人に頼めば良いじゃん」

「体育系の部に入っている人は、掛け持ち禁止!
っで、それ以外で使えそうなのは、有希だけなんだよ!うちのクラスの栄光のために、一肌脱いでくれ!」

有希が頼るように俺を見た。

確かに、有希ならかなりの戦力になる。

俺だって、結構負けず嫌いだから、今度の球技大会で優勝したいと思ってたりしてる。

勿論、俺はサッカー。

「良いじゃん。やってやれよ有希」

「はぁ?お前まで、何言って…」

「頼むよ〜羽山〜」

有希の手を取り、懇願するそいつに、俺は思わず引き離した。

「有希、やるよな!」

「…?はっ?だから…」

「や・る・よ・な!」

「…たっく、分かったよ」

「おーサンキュー!」


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