Dreams Are Lie

□第十三章・勘違い
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―朝練があるため、俺は早めに起きた。

欠伸をしながら、台所に出て行くと何時も居る有希が居ない。

首を傾げて、有希の部屋をノックするが、返答がなかった。

勝手に開けたら、怒るかなとは思ったけど、そっとドアを開けた。

ベッドが膨らんでるから、多分まだ寝てる。

珍しいなーと思いながら、俺はそっとベッドに近付いた。

夏なのに、冷房もかけていない。

そういえば、前に冷房は苦手だとぼやいていた。

窓が開いていて、そこから朝の清々しい風が入って来る。

タオルケット一枚を身体に巻き付け、有希は子供みたいに丸まって寝ていた。

穏やかな寝息が、風に乗って俺の耳に聞こえて来る。

その可愛いらしい姿に、胸が高鳴る。

「こーして見ると、女にしか見えないんだけどなー」

じっと有希の寝顔を盗み見る。

長い睫毛が、今は綺麗な瞳を覆っている。

色素の薄い髪が、窓から入る風に靡いて、石鹸の香りが鼻孔に届いた。

そっとその髪を梳いて、額に口付ける。

有希には内緒にしてたけど、想いを伝える前にもこういう事をした。

言えば、顔を赤くして怒るだろう。

その事を想像し、俺は小さく笑った。

自分の気持ちに、有希が答えてくれた事が今でも時々信じられなくなる。

だって、同性だし、俺みたいな馬鹿を有希が好きだと言ってくれて…

やべ、顔がほてって来た。

「…んっ」

有希が身じろぎ、薄っすらと瞳を開けた。

暫く視界が合わないのか、焦点を俺に合わすまで、少し時間が掛かった。

俺に視点を合わせて、また目を閉じようとした有希だが、途端ぱちっと目を開けた。

がばっと上体を起こし、俺を見る有希が一気に顔を赤らめた。

その姿さえ可愛く見えるのだから、俺も相当重病だ。

「おはようー有希!」

にっこりと笑えば、口をぱくぱくとしている有希の額に青筋が立つ。

「か、勝手に入るなと言っただろ!」

「だって、お前が寝坊なんて珍しいじゃん?
心配したんだぜー?」

「だからって入るな!」

「良いじゃんか〜俺と有希の仲だろ?」

「ばっ…馬鹿野郎!!」

枕を投げ付けてくる有希に、笑みが零れる。

それにまた気を悪くしたのか、手元にあった時計を手に取る有希に焦って、俺は退散した。

暫くテーブルに着いていると、有希がぶつくさ言いながら出て来た。

座ってる俺を睨み、台所へと入って炊飯器を開ける。

「朝練があるならあるって言え」

時間を気にしてか、そう言いながら、有希はおにぎりを作って俺に渡してくれた。

「ごめんごめん!つい忘れちゃってさ!」

「全く…」

溜息をついて、有希も俺の向かいに座った。

頬杖をついて、小さく笑った有希が凄い綺麗だ。

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