☆ロイアイしょうせつ(おだい)☆
□銃声
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(君の銃の音はあたたかいね、だから…)
今日もいつも通りの1日になるはずだったんだ。
いつも通り出勤して、いつも通り仕事して、いつも通りサボりに行って、いつも通り迎えに来てくれるのは美人の副官だと思っていた。
ロイ・マスタングは昼休みが近いのをいいことに、サボりに司令部の外に出ていた。
でも今日は最近見つけた、いつもと違う昼寝場所に来ていた。
小さな目立たない路地にある公園の木の木陰だ。
草の上に寝転がり、読んでいた本を顔に被せてうつらうつらしていると、サクサクと近くで芝生を踏む音が聞こえ意識が覚醒する。
(やっと来たかな??)
自分を迎えにやってきた、少し不機嫌な副官を想像し、口許を緩める。
ロイはまだ眠っている振りを続けて、起こしてもらうのを待ち構える。
が、リザにしては重い足取りにふと疑惑が浮上した。
(中尉ではないのか…??でも近付いてきてるし…)
ロイは本の隙間から、目を薄く開けて、音のする方をみた。
視界が靴をとらえると、バッと俊敏に起き上がり、相手と距離をとった。
案の定相手はリザではなく、見知らぬ男だった。
しかも一人ではなく、後ろに複数控えている。
ただならぬ雰囲気の男たちに、ロイは発火布を出そうとポケットに手をいれるが、先ほどリザに預けてしまったことを思いだす。
(しまった…)
内心焦りつつも、ロイは平然を装う。
チャキリという音とともに、ロイに銃口が向けられる。
リザ以外に向けられるそれにロイは目眩を覚える。
「ロイ・マスタング大佐だな??護衛も付けないで、のこのこ散歩か。美人の中尉さんはどうした??」
「なっ…」
まさかそこでリザが話に出るとは思っておらず、ロイは少なからずとも動揺してしまう。
その不意をついて、後ろから来た男二人にはかいじめにされた。
「お前ら…テロリストか何かか…」
「ああ??この顔に見覚えが無いとは言わせないぜ」
目の前の男は前髪をかきあげて、顔を露にする。
顔面は半分ほどケロイドに覆われていて、火傷の悲惨さを物語っていた。
「あの町工場のテロリストたちのとりのがした奴等か…」
つい数週間前、町工場がテロリストに襲われ、焔の錬金術を使って撃沈した際に数名取り逃がしたのだ。
(数名だから無視していたが、こんな形になるとは…)
ロイは自分の失態にギリッと歯を噛み締める。
「ああそうだ!これはテロじゃなくて俺ら個人のお前個人への復讐だ!この火傷の分、たっぷりお返しさせてもらおうじゃないか。」
言い終わるとともに、男は小さく片手をあげる。
すると、ロイの鳩尾に鋭い痛みがはしり、ロイの視界が歪む。
そしてそのまま前のめりに倒れる。
「く…そ……っ」
ロイは悔しそうにそこで意識を手放した。