☆ロイアイしょうせつ☆

□心の内
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ロイが書類をこなしている後ろでリザは、彼が仕上げた書類を間違いがないか確認していた。
ロイのペンが紙を走る音と、リザの紙が捲られる音のみが執務室に響く。
リザの目の端にちらちらとロイが映る。
ふと、彼に目を向けると、今朝の友人・レベッカとの会話を思い出した。



リザが朝早く射撃練習場に行くと、レベッカとばったり鉢合わせになった。
練習の合間に他愛もない会話をしていて、リザは急にレベッカに問われた。


『リザは好きな人とかいないの??』


不意を突いたこの質問。
いない、と即答できなかったのは、心当たりがあるから。
脳裏を黒髪の彼が掠める。
少し間を空けてしまいつつも、笑いながら否定し、問うた理由をレベッカに聞いた。


『いやー、最近彼と別れちゃってさー…なんだかリザのも気になって』

『いいわね…』


気が付いたら呟くように、そう答えていた。
ほぼ無意識だったその言葉に、怪訝そうな顔をする友人を見て、慌てて口を塞いだ。


『え??』

『ごめんなさい、何でもないわ』


急いで取り繕うと、疑問そうにしつつも、レベッカは去っていった。
それにリザは胸を撫で下ろす。
破局してしまったらしいレベッカには悪いが、彼女には羨望の気持ちを抱いていた。

(私は愛を伝えることも叶わないから、別れることも出来ないの。皮肉なものね)



リザは回想に浸っていると、急にロイが振り返った。
きっとリザが繰る紙の音が止まったから、怪しく思ったのだろう。
ロイに目を向けていたため、振り返ったロイと強制的に目が合ってしまう。
慌ててそらしたが、今度は取り繕えなかったようだ。
ロイはリザを振り返ったまま、顔は見えないが、静止している。


「…どうした??」

「すみません。執務中にぼうっとしてました」

「いや、体調でも悪いか??」

「いいえ、大丈夫です」


顔を上げると、ロイは不安そうに眉を寄せていた。
正直、あまり優しくしないでほしかった。


「この書類、問題ありませんでしたので、提出して参ります」

「本当に大丈夫か??」

「…ええ、お気になさらず」


リザはまるでロイから逃げるように、早足で執務室を出た。

(だって、思いを伝えられないのが、もっと辛くなるでしょう??)
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