☆ロイアイしょうせつ☆
□君はいつでも
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ハボックは走ってきたロイに気がつくと、片手をあげた。
「あ、大佐っ!こっちっス」
「中尉はこの中か??」
ロイは息を切らしたまま、ハボックには目もくれず、ドアノブに手をかけた。
中尉が交通事故にあったと連絡をうけ、ロイは仕事を投げ捨てて急いで病院にやってきたところだった。
が、その手をよこからハボックが掴んで阻止すると、ロイは心底イラついた顔で彼を見上げた。
「離せ」
「いや、ちょっと待ってくださいよ」
ハボックは睨みあげてくるロイからバツが悪そうに目をそらす。
ロイはそこではっとして、顔を曇らせる。
「…そんなに、…悪いのか??」
「いやいやいやいや、違うんス。軽く頭をうっただけみたいで、もう意識も戻って、ピンピンしてるっス。ただ…」
ハボックはそこで躊躇し、黙り込む。
ロイは怪訝そうな顔でみつめる。
「ああ、もうじれったいな!入れば分かるだろ」
しかしハボックが話し出すより前にロイが堪らなくなってドアを開けた。
後ろから聞こえるハボックの小さな悲鳴を無視して、中にずんずん入っていく。
すると中にはケロリとした顔のリザがベットに腰掛けていた。
リザはロイに気がつくと、ぱあっと顔を明るくした。
だが、ロイはそこで急に得もいわれぬ違和感に眉をひそめる。
「どうしたんですか??」
「あ、いや、見舞いに」
「本当ですか!ありがとうございます」
リザは滅多にしないような満面の笑みを振り撒く。
それにさらにロイは怪訝そうな顔をする。
「中尉…か??」
「チュウイ…??」
「ち、中尉…??」
「チュウイ??注意??何言ってるんですか、マスタングさん」
ロイは懐かしすぎる響きに一瞬意識が遠退く。
しばし放心していると、後ろから小さく名前を呼ばれる。
振り向くと開いた扉の影から、ハボックが手招きをしていた。