☆ロイアイしょうせつ☆
□ごめん
1ページ/6ページ
(ただ一言が言えなかった。ごめんなさいの一言が)
リザは珍しく一人で司令部の廊下を歩いていた。
心なしか項垂れていて、足取りもどこか重い。
リザは先程上官のマスタングと喧嘩をしてしまった。
原因は本当に些細なことで、ただの口論がヒートアップしてしまい、口喧嘩になってしまったのだ。
別に喧嘩が珍しい訳ではない。
ただ、喧嘩別れをするのは初めてだった。
いつもは必ずどちらかが折れて和解するのだが、今日はなかなかどちらからも'ごめん'の一言が出ず、途中でリザが走って抜け出してきてしまったのだ。
『君は真面目すぎる』
いつもは気にならないそんな一言にカチンときた。
『大佐が不真面目すぎるからです』
だから、リザも挑戦的に言い返した。
すると、そこでロイがムッとした顔になる。
『不真面目とはなんだ』
『お分かりにならないのですか??貴方がサボるから、私は真面目にならざるを得ないんです』
『いつもサボっているような言い方だな』
『その通りではないですか』
『そんなことないだろう!今だって仕事をしているではないか!』
『どうせ一時的でしょう!』
『なんだと!だいたい君は…』
リザは先程の口論を思いだし憂鬱になる。
そのあとも長々と言い合ったあと、急に沸き上がってきた悲しさに涙を覚え、リザは一方的に別れてきたのだ。
ロイも少々荒っぽかったかもしれないが、リザは自分にひどく非を感じ、はぁ とため息をついた。
(ただ、私が'ごめんなさい'と言えば済むことだったのに)
リザの心に次々と後悔が沸き上がってくる。
そこでピタッと足を止めると、少し躊躇してから身を翻した。
(やっぱり、謝ろう)
何故だか泣きそうになるのをポーカーフェイスの下に隠すと、リザはロイの元へまた歩きだした。