☆ロイアイしょうせつ☆
□ずるいひと
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「はぁ…」
リザは目の前にかかったドレスを見て、もう何度目かわからないため息をついた。
ワインレッドだが落ち着いたデザインのドレスは体にフィットする型になっている。
リザの背中を考慮してか、背中は襟足まで隠れるようになっているが、サイドには極限まで切り込まれたスリットがはいっていた。
素敵だが、自分が着るのはどうも気がひけるリザはまたため息をつき、先程のグラマンとの会話を思い出す。
『ねぇ、リザちゃん、こんなドレス着たくなーい??』
『いいえ』
『ええー、つれないなぁ。着てよ!』
『お断りします。それにそんなの、私には似合いません』
『いや、絶対に似合うよ!マスタング君の折り紙つきだ。』
『え??』
『君はマスタング君と今夜の軍のパーティーに、これを来て出席してもらうよ』
『そ、そんなの聞いてません!』
『命令だよ??』
『…職務乱用です』
『ま、よろしく。19時30分に裏玄関ね』
『グラマン中将っ!』
というわけで、いまに至る。
大佐、という地位にもなってくれば、軍のパーティーにも出席するようになる。
でもリザはまさか自分までもが出席するとは思ってもみなかった。
思えば思うほど気が重くなってきて、項垂れる。
が、パーティーとなれば上官との接触は多々ある。
だから、リザが愛想よく振る舞っておけばロイの出世に繋がる。
(大佐の出世のため、大佐の出世のため…)
リザは渋々顔をあげると、軍服のボタンをはずした。