☆ロイアイしょうせつ☆

□もう少し…
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アメストリス高校3年2組担任ロイ・マスタングは、卒業生で溢れかえる桜満開の校庭を3階のまどから眺めていた。
式も先ほど終わり、自分にサインをせがんでくる卒業生もやっと落ち着つく。
式のためにきつく絞めていたネクタイを緩めた。
卒業生たちは皆校庭にでて、最後を惜しむように写真をとりあったり、ふざけあったり、泣き合ったりしている。
たくさんの生徒でごった返している中に、ロイは無意識に目である生徒を探していた。
うろうろと動いていた目線がふと、止まる。
そして、優しく微笑んだ。

目線の先には可愛らしい少女が友達と話に花を咲かせていた。
綺麗な金髪が濃紺のセーラー服の上でさらさらと揺れる。
時折、涙で潤んだ琥珀色の瞳を細めては、口を動かす。
彼女はリザ・ホークアイ。
ロイのクラスの容姿端麗成績優秀な生徒であり、さらにもう付き合って2年になるロイの彼女だった。

ロイは優しい笑みのまま彼女を見つめる。
不意に、バチッと目が合う。
リザはわずかに笑って、小さく会釈をする。
ロイはそれに答えるように小さく手を振り、口を開いた。


「(あ、い、し、て、る)」


口パクでそう言うと、リザは照れたように頬を染め、俯いた。
ロイはその可愛さにククッと喉を鳴らす。
そして、リザはまたちらっとロイを見上げた。
ロイはそれに手招きをする。


「(い、つ、も、の)」


また口パクでそう伝えると、リザは友達の話を軽くあしらって、走りだした。
ロイはそれを見届けると、今度は窓から扉に目線を移した。
まもなく扉があいて、先ほど校庭にいたリザが現れた。


「リザ、卒業おめでとう」

「先生、学校では名前で呼ばないでくださいっ!それに、さっきの!誰かに気付かれたら、どうするんですか!」


リザはまたさっきのやりとりを思い出して、赤面する。


「君は本当に可愛いな。誰にも気付かれなかったんだから、いいだろう??リザ、おいで」

「っだから、学校ではっ」

「でも今は二人きりだ。それに君はもう学生じゃないだろう」

「今日はまだ先生の生徒です」


リザはためらいながら、入ってきた扉に鍵をかけ、両手を広げて待っているロイに近づく。
ある程度まで近づくと、ロイは自ら歩みより、リザを抱き寄せた。

ここは旧化学室、通称‘いつもの’。
もう使われていないため、誰も来ないので、二人は学校内ではここで会っていた。
先生と生徒、という公にはできない恋をしている二人にとっては絶好の場所だった。


「早かったな…」

「そう…ですね」

「なんだか寂しいな…」

「はい…」


ロイがさらにギュッと抱き締めると、リザも遠慮がちにロイの背に腕をまわした。


「リザ、今夜空いてるか??」

「えっ??」

「二人で卒業パーティーをしよう」


ロイは、驚いて顔を上げたリザの前髪にキスを落とす。
それにまたリザは赤面してロイの胸に顔を埋めた。


「予定はありません」

「じゃあ俺の家に19時でいいか??」

「平気です」

「じゃあ美味しいディナーを用意して待ってるよ」

「ありがとうございます」
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