☆ロイアイしょうせつ☆

□マトリカリア
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「んっ…」


ロイは窓からする音にうっすらと目を開ける。
電気さえつけていない閑散とした部屋その音が響き渡っている。
だるい体を起こし窓を見ると、水滴が滴っていた。

(雨、か…)

音は雨水が窓を叩く音のようだった。
降りだしてからしばらく経つのか、雨が激しいのか、窓は雫で埋め尽くされていた。
ロイはそれを確認すると、再び体をソファに横たえる。
みじろぐと、口から湿った咳が漏れた。
部下たちには大したことないと言ってあるが、だいぶ風邪は酷いようだ。
風邪薬は常備しておらず、買いに行く元気もないため、朝からずっとソファで横になっているが、一向に良くならない。
熱を帯びた頭がガンガンと疼いて、ろくに眠れないからだ。
風邪特有の雰囲気に苦手な雨が重なり、急に人寂しさが襲ってくる。
脳裏を生真面目な彼女が過る。

(もう定時を過ぎているな…雨に降られる前に帰れただろうか)

思考を彼女に切り換えると、更に寂しさが増した。


「中、尉…」


呟いた声は驚くほど掠れていて、なんだか情けなくなった。
と、同時にひどく彼女に会いたくなった。
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