☆ロイアイしょうせつ☆

□ずるいひと
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−トントン

「大佐??」

「中尉か、早かったな。入れ」


リザは扉を開けて、ロイの執務室に入る。
先程、ロイから髪をやってほしいとリザに伝言があったため、リザは着替えてからロイのところに来たのだ。
中には仕立てしたてかのか綺麗なタキシードに身をつつんだロイがソファに腰掛けていた。
ロイは彼女をみると、ほぅと感嘆のため息をもらした。
リザはというと、馴れない格好が無性に恥ずかしくて俯いてその場でもじもじしていた。


「うん、やはり私の目に間違いはなかったな」

「…」

「よく似合っている。綺麗だ、中尉」

「……恐縮です」


リザはほほを紅潮させると、上目遣いでちらりとロイを見やってまたすぐに目を逸らした。
ロイはそんな可愛い仕草にクックッと喉をならす。


「君の素敵なドレス姿を早く見たくて、髪をやってもらう口実をつくったのさ」

「っじょ、冗談はよしてください!」

「そうカリカリするな。綺麗な顔が台無しだぞ」

「っ…ずるいひと…」

(貴方ばっかり…)


リザも内心、あまり見ないロイのタキシード姿は素敵だと思っていた。
だが、不器用な彼女はロイみたく素直にそれを伝える術を持っていない。
もどかしさに、ただ小さくそう呟いただけだった。
それはロイの耳には届いておらず、心の中でほっとする。


「さあ、遅れてしまわないように早くワックスを寄越してください」

「そうだったな」


ロイはリザにワックスを手渡す。
リザはそれを手際よくチューブから手に出して、ロイの髪を後ろに撫で付けていく。
それにロイは心地良さそうに目を閉じる。


「そのドレスの一番の見所はどこだかわかるかい??」

「裾の刺繍ですか??」

「いいやスリットさ。深いから、君の形のいい太ももがよく見え」

「はい、もう終わりましたよ!冗談は聞きあきました!私は先に待ってますから」


リザはロイの言葉を遮って、早足で部屋を出ていく。
だが真っ赤になった耳は隠しきれていなかった。
それにロイは苦笑いで呟く。


「全部冗談なんかじゃないのにな…」
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