tale
□何も求めない
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ね、アンタは何がしたいの?
そう問うても、
「何も」。
いつもそう言ってそっぽを向いてしまう。
俺はアンタに何かしてやりたいだけなのに。
今日も、いつものように同じ事を聞く。
今日はいい天気だ。
「何かしたい事ない?」
綺麗な空を見ながら、何気なく聞く。
「だから、何もない。」
やっぱりか。
予想通りのそっけない応えに思わず苦笑する。
強い光を放つ太陽を見上げ、眩しそうに目を細める砕蜂は、それはもう輝いて見えた。
「…いつも、修兵は同じ事を聞くな。」
砕蜂が口を開く。
だって一回も砕蜂に何かしてあげられてないんだ。
せっかく憧れの彼女と付き合えたのだから、彼女の為に何かしてやりたい。
その気持ちを伝えると砕蜂は太陽を見つめながら言った。
「私は、修兵の隣にいられるだけで十分幸せだ。」
砕蜂は太陽から視線を逸らし、俺を見た。
そして、微笑んだ。
ああ、
俺は、彼女に溺れているんだ。
今度は俺が太陽を見上げる番だった。
いつまでも翳らないうざったい太陽が、自分を笑っているかのようで苛ついた。
「俺も」
砕蜂を見ずに俺も呟いた。