tale

□はらはら
1ページ/1ページ




いつも気にとめることもない
ただの木が。

春には姿を変える。

薄紅色に色づき、見る者を楽しませてくれる。

そんな花が私は好きだった。


特に
花が散る様を見るのが好きだ。

花の盛りは見事だが、
それが一気に散る瞬間はなお美しい。儚さの中に真の美しさがあると思う。

昨日は、花が満開でとても綺麗だった。
今は夕方だが、風が少し強い。
夜にその花、桜が散るのを見に行こう。

夜桜が散る様を見られるとは、楽しみだ。













「しゃー、終わったー」
大前田がのびをしながら無駄に大声で言った。

いちいち口にださんでも良いだろうが、莫迦者。

しかし、今日は夜桜を見る予定があるので機嫌がいい。
手も口も出さず、代わりに指示を出す。

「では、帰り掛けにこれを一番隊へ出して行け。
私は九番隊へ瀞霊廷通信の原稿を出して来る」

私は、瀞霊廷通信で細々とある記事を連載している。
その為、編集作業のほぼ全てを担当している九番隊の檜佐木修兵に原稿を出しに行く必要があるのだ。

「へい、分かりました。
じゃ、お疲れ様でしたー」


大きな体からは予想できない程の速さで大前田は消えた。


私も、急ぐか。
桜は待ってはくれんからな。


瞬歩で九番隊へ行く。
檜佐木はいつもの如く、隊長業務と編集作業に追われているようで、机は大量の紙で埋め尽くされていた。


「檜佐木。」

「うぉっ‼…あ、砕蜂隊長スか…こんにちは…や、こんばんは…」

力なく言葉を紡ぐ檜佐木。
東仙がいなくなり、大分苦労しているようだ。
しかもなんだかひどく生気のない目をしている。
「瀞霊廷通信の原稿を持ってきた。頼む。」
「あ、早いっスね。助かります」

そう言って原稿を受け取る彼だった。
気晴らしがあれば良いのだがこの分ではそれもなさそうである。
ああ、そうだ。
夜桜に誘ってみるか。
ちょっとした、思い付きである。


少し勇気を出して声をかけることにする。

「…貴様、疲れておるのではないか?根を詰めすぎるのはよくない。…桜、見に行かぬか?」
「……は…?」

私が言うと、檜佐木は呆然と私を見つめて来た。折角誘ってやったのに失礼な奴だな。

こちらの意志を察したのか、檜佐木は慌てて口を開いた。すると、

「や、すいません‼
まさかいきなり夜にデートに誘われると思わなくて…」


などと訳のわからんことを赤くなって言い始めた。
でえと?
なんだそれは…

「ふん…行かんのならいい」

意味がわからないが断られたのだろう。
では早く花見に行こう。

立ち去ろうと窓枠に脚をかけたら、急に肩を掴まれた。
驚いて振り返ると、何故か顔が赤い檜佐木が立っていた。

「是非行かせて下さい‼
…っと、俺…桜、好きなんで」

「…そうか。うむ。綺麗で良い気晴らしになると思うぞ。」

「はい!ありがとうございます」

そうか。
檜佐木は桜が好きなのか。
瞬歩で行こうと思ったが、それでは檜佐木は場所が分からないだろうから歩いて行くか。

「では、行くか。」
幸い桜は九番隊近くに生えている。ちょうど良い強さの風もあり、花が散る様を見られる条件は良好だ。
「は、はい‼」
檜佐木は緊張した様子でついてくる。
「あ…砕蜂隊長…」
急に話しかけられる。
なんだ、と答えると檜佐木はやっぱいいッス、と苦笑しながら応えた。
本当に意味が分からない。


少し歩くと、桜の花弁がたくさん落ちていた。顔を上げると、大きな桜の木が悠然とそこに立っていた。
暗闇に桜の淡い色が浮かび上がり、本当に美しい。

「綺麗だ…」

ぽつり、と呟くと

「そう、ですね…」

と返ってきた。

不意に風が吹き、目を一瞬閉じた。ゆっくり目を開けると、無数の小さな花弁が舞っていた。
雪のように、はらはらと落ちて行く。思わず手を差し出すと、ひら、と一枚の花弁が手のひらに乗った。
それがなんとなく嬉しくて、俯いて小さく微笑んだ。

「…あの、砕蜂隊長。」
「なんだ」
「…綺麗ですね。」

あんな厳つい顔の奴にも風情が分かる奴がいるんだな。
なんだか、桜の美しさを分かってもらえて嬉しかった。

私は返事の代わりに、檜佐木を見上げて微笑んだ。

すると、檜佐木も優しく笑い返してきた。
そして、
「好きです、砕蜂隊長。」
と唐突に言った。





再び舞い落ちてきた花弁が頬に触れた。





訳は分からないわ恥ずかしいわで動く事ができない私は、ただ哀しそうに薄く笑う檜佐木を見上げ続けることしかできなかった。


「こうやって、散るんスよね…」


小さく呟き、檜佐木は桜の大樹を見上げた。


桜の花弁はまだ宙を舞っている。


「…すまない。」

私はやっとの想いで言葉を絞り出す。
彼は分かってました、と苦笑した。

「だが…」

柄にもなく、言いたくなったのだ。苦労を隠し平気なフリを続けるその辛さが分かるから。


「私は、貴様の味方だ」

自然と、笑みが零れた。
檜佐木は目を見開き、驚いている。その黒い頭に、薄紅の花弁が落ちる。

そっと近づき、背伸びをして取ってやった。


「あ、ありがとうございます…」
「貴様の春は…これからだな」


イタズラっぽく笑うと、赤い顔の檜佐木を置いて、私は歩き去った。


綺麗な、見事な夜桜だった。



今はまだ檜佐木に特別な愛情はない。しかし何故か、いつか彼に絆される気がしてならない。

どこか、惹かれるところがあったのだろうか。


ちら、と振り返ると、檜佐木は私を見て慌てて頭を下げた。

なんだか可笑しくて、小さく笑った。

桜の大樹と深深と頭を下げる檜佐木の大きさの差が印象的だった。



来年、この桜を見る時も、誰か隣にいるのだろうか。



そう考えたが何だか恥ずかしくなり、瞬歩で自宅へ帰った。














(((o(*゚▽゚*)o)))(((o(*゚▽゚*)o)))
あとがっきー(((o(*゚▽゚*)o)))

ありがとうございましたm(_ _)m

桜の花と檜佐木の恋が散りました。
的な話にしたかったけどマジ意味わかんねw
すいませんでした…
砕蜂のキャラ違うよゴメンなさいm(_ _)m泣

はわわわわ…
頑張って文章力鍛えます\(//∇//)笑

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ