リボーン短編

□ただずっと…
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ねぇ、骸。
どうしてあんたはいつも、勝手にいなくなるのかな。


ねぇ、骸。
私って、そんなに足手まとい?


ねぇ、骸。
…泣かないよ、泣かないから…。戻って…きて…。




私は階段を駆け上がる。
さっきまでは任務が楽勝だったと上機嫌だったというのに、今は嫌な予感が止まらない。


帰ってきた時に見つけた、点々と続いていた血の後がやけに頭に残っている。


3階までの、長い道のり。
両耳にはめたイヤホンから流れる音楽が、今はすごく耳障りだ。


「…っ、骸!!」


階段をやっと登りきって、彼の姿を捜す。

…でも、いない。
争った後と、血痕を残して、そこには何も…っ!


今の状況が受け入れられず、私は呆然と立ち尽くした。

お気に入りの曲が、ただ私の鼓膜を震わすだけ。


「……な、に。何で…、どこに…」


あぁ、彼が私を任務に行かせたのは、そういうことか。

………っ、なんで!


「骸!今何してんの!?何したいのよ…!?
何で、置いてかないでよ…っ!」


叫んだ言葉は、あまりにも虚しくて。

私はここだ、なんて言葉は出てこない。


「…好きよ。大好き。
いつまでも…、愛してる。過去形になんて、してあげないから」

例え、ソレをあなたが望んでなくても。


ガクガクと、もはや役に立たない膝に従って、その場に崩れ落ちる。

待ってる、なんて…所詮は強がり、なんでしょう?


本当は気づいてた。何かあるって。

身振り手振りで説明されても…、意味なくて。


「…骸」

私を抱き締めてくれた、あのぬくもりも。

「……むくろ」

冷たいように感じる、分かりにくい優しさも。

「…むく…ろぉ…っ!!」

何もないのだからもう…、信じる、ことしかできなくて。


でも、それでも本当は辛いんだ。

切なくて寂しくて苦しくて───…

「泣きたいよ…っ!!」


いつも意地張ってて、ありがとうもごめんも言えてなかったね。

ごめん…、でも骸の苦笑する顔とか、嬉しそうに笑う顔とか、
全てが…好き、だったの。


骸、今何してる?
私はここにいるから…、早く戻ってきてよ…。

一人にしないって…、そう言ったのに…っ!!


愛してる、愛してるよ。だってあなたは私の世界なんだもの。

永遠にこのメッセージを語り紡ごう。

貴方が無事、ここへ帰ってこられるように…。


ついに堪えきれず溢れ出した涙にも気付かない程に、私は祈る。


強く、強くあってほしい。

貴方の好きな蓮のように強く…幸せに、なって。




貴方だけを想い続ける。


(でも覚えていて)(私が幸せになる為には)(貴方が必要なのよ)(…骸、)



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