夢小説〜鬼灯の冷徹(LONG)〜

□昔々、鶴の話
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出来上がった反物をお爺様に渡し、どうすればもっと綺麗に出来るかわかりましたから「布を売ってまた糸を買ってきてください」とお願いしたのです。
日が暮れてお爺様が帰ってくると頼んでおいた糸と、布を売ったお金の余りで買ってきた沢山の食材なんかがどさどさと。
お爺様の話によるとどうやらとても高値で売れたらしいのですよ。
なるほど、あれでそんなに高値で売れるのならば次はきっと更に高値がつくに違いないと確信しましてね。
それからまた部屋に篭り反物を無心で織り続けました。
お爺様とお婆様のためにと心を込めて。
出来上がった反物をまたお爺様に渡し、同じようにまた糸をお願いしたのです。
やはり私の予想は的中しまして、更に高値がつき、お爺様とお婆様は裕福になりました。

さて、悲劇的な別れはこの後でした。
いつも通り部屋に篭り織っていると、多分好奇心に負けたのかもしれませんね、お二人は中を覗いてしまったのです。
勿論羽を使うために元の鶴の姿に戻って作業をしていましたからお二人共腰を抜かすほど驚かれていました。
え?娘の居場所に鶴が居たなんて状況は誰でも腰を抜かしますって?
確かにそうかもしれませんね。
今思うと、羽を抜いて作業をしていたものですからあちこち羽毛が抜けてとても哀れな姿だったと思いますよ。
まあ、見られてしまってはしょうがありませんし事実を伝えなければいけません。
最後の反物を織り終え、腰を抜かしているお二人に「お爺様に助けてもらった鶴です」と伝えました。
本当はもっと色々してあげたかったのですが見られてしまってはもう人には化けられませんし、御仏との約束もあります。
これ以上はここにいは居られないと言うとお二人は「それでも良い、一緒に住もう」なんて言っていただけて。
あの言葉で私は救われましたね。
それでも去らねばならないと言い外に出るとお爺様は見送りをしてくれるのか外に出てきてくださいました。
別れを告げ、私はその場から逃げるように飛んで行きました。
お二人の辛い顔はみたくありませんでしから。



「ふーん。鶴の恩返しは最終的に奈鶴ちゃんのおじいさんとおばあさんに対する愛情話だったわけだ」
「そんなたいそうなものじゃないですよ。ただ、恩返しをするために小さな事を一生懸命した鶴のお馬鹿な話です。今から考えればもっと他にも良い方法があったと思うんですけどね」
「奈鶴さんは後悔していないのですか?」
「何をですか?鬼灯様」
「きちんと恩返しが出来ていないと思われているのでしょう?」
「ええ、まあ。でもまたこれも運命なのかと思っていますよ。だからあのあとお二人が不自由なく暮らせていたならば私はそれだけで充分なのです」
「なるほど」
「ただの自己満足なんて言われてしまいそうですね」
「いーんじゃないの?奈鶴ちゃんがそう思うならきっとそれで正解だよ」
「は、白澤様が珍しくまともな事言ってます!!雪でも降ります!?」
「失礼過ぎるよ奈鶴ちゃん!!」
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