夢小説〜鬼灯の冷徹(LONG)〜

□鶴の意趣返し
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「だいたい何なんですかあの人は。だから堕獣なんて呼ばれちゃうんですよ。ほんともうあり得ない」

ブツブツと文句を言いながら仙桃を摘んでいると後ろから見目麗しい(笑)男性が声をかけてきた。

「どうかいたしましたか?」
「いえ、芝刈りの人員募集をしていた極楽満月ってどこでしょうか?」
「あ、ああ。来ていただけたんですか。ご案内致しま…」

ふと出てくる前の光景を思い出し、言葉が途中で途切れた。

「いや、まだ行かない方が良いかもしれませんよ」
「え?」
「いや、こっちの話です」

なにせ店の店主があんなだと知られたら帰ってしまうかも、なんて悪い予感がどうしてもしてしまう。
でもまあ、丁度いいかもしれない。
これで私が抜けても大丈夫じゃないか?なんて言えるようになったのだから。

「えっと俺はどうすれば…」
「あ、案内しますよ。だけどもう少し待ってもらって良いですか?あとちょっと仙桃摘まないといけないので」
「あ、わかりました」

あっさりと承諾した彼は手持ち無沙汰なのかぼーっとし始めた。
そういえば名前を聞いていなかったな。

「あの」
「っはい!」
「お名前を伺っても宜しいですか?」
「あ、も、桃太郎です」
「桃太郎?ってあの鬼退治で有名な?」
「いえ、そんな事はないです。アレはたまたまっていうか、まあ、はい」

聞いて欲しくなかったのか目を逸らされてしまった。
仙桃を摘み終え、桃太郎と並んで歩く。

「あ、申し遅れました。私は極楽満月の従業員をやっています奈鶴と申します」
「あ、従業員さんだったんですか!?」
「ええ、まあ一応」

もうすぐ獄卒になるんですけど、なんて言えるはずもなく軽く流しておいた。
そうこうしてるうちにあっという間に極楽満月に着いてしまった。
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