夢小説〜銀魂(LONG)〜

□第七訓
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ギリギリの所で避けるとそこには身長に見合わない大きく赤い刀を持った少女が居た。
少女の持つ刀は、柄だけでなく刃そのものも真っ赤であった。
血に染められた不自然な赤でなく元からそうであったような自然な赤。
なるほど、こいつが噂の紅鬼姫とやらか。
噂通りまだ小さな少女だ。
噂にはないが少女はおかっぱ頭で前髪や後ろ髮に白い毛束がある。
そしてなにより不自然なのが返り血を浴びていない真っ白な着物。
少女が飛び降りた死体の山は血みどろ。
おかしな話である。
いや、しかしお化けなぞ存在しないと思っている銀時にとってこれはなかなかの効果があったようだ。

「強いね、お兄ちゃん」

凛と鈴がなるように小さいながらもはっきりと聞き取れる声をした少女は銀時に話しかけていた。
どこか嬉しそうに。

「お、お前は誰だ?」

ビビったまま声をかける銀時。
これでは相手に隙を見せてるも同然なのに気が付きはしない。
これに気付かぬ少女ではない。
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、また鈴のような声で話しかける。

「もしかして、お化けが怖いの?」
「ち、違ぇよ!怖くねえっ!」

ころころと笑う少女。
完全に馬鹿にされている。
少女は大きな刀をずるずると引きずりながら銀時に少しずつ歩み寄る。
銀時は刀を構えたまま後ろに下がる。
こうして両者の間は一行に詰まる事がない状況ができていた。

「て、テメーは幽霊なのか?」
「幽霊は柳の下にいるんでしょ?玉藻は違うよ?玉藻は玉藻だもん」

ちょっと心外だというようにぷくっと頬を膨らませる少女。
また、少しずつ間を詰められ銀時の刀の先が少女の鼻先に当たる距離に。

「切らないの?」

じっと見つめ合う少女と銀時。
銀時は切ろうと思えば切れる状況である事は認識していた。
だが、なにがそうさせるのか銀時の手は動かなかった。
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