夢小説〜鬼灯の冷徹(LONG)〜

□鶴の意趣返し
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「白澤様!私、出て行きます!」
「ええええ!?聞いてない!」
「今言いました!」

朝から極楽満月に響くのは男女の声。
白澤様と呼ばれたその男は焦りを隠そうともせずわたわたし始めた。
出ていくと豪語した奈鶴、つまり私は三角巾を握りしめながら白澤様に言葉を紡いだ。

「だって獄卒、受かったんですもん」
「はあ?!」
「しかも首席で」
「何それ凄い!!」

普通に驚いてしまったと白澤はハッとした表情。
そんな事は放り、眈々とこの機会を待っていた私は白澤様に言い切った。

「わかりました。辞めるとは言いません。ただ、長期休暇貰うだけです。100年くらい」
「多いよそれ!」
「何言ってるんですか?白澤様と過ごした時の10分の1ですよ?短いじゃないですか?」
「そう言われるとそう感じるからやめて!」

1000年程の付き合いだがこうしてみると案外ちょろい白澤様。
それでもと食らいつく白澤をどれだけ言われても揺るがないと言い包める私。

「だって白澤様言ったじゃないてすか。やりたい事があったら何でも言ってって」
「いや、確かに言ったけども!」
「あれは嘘だったんですか?」
「違うって」
「じゃあなんでダメなんです?」
「ただでさえ人員不足なのに君が居なくなったら困るんだよ!」
「別になんとかなってたじゃないですか」
「それでもっ!僕が嫌だ!」
「はあ?!」

今度は私が驚かされる番であった。
むっと膨れる白澤様は絶対に行かさないとしている。

「第一なんで獄卒なの」
「昔から興味あったんです。話した事ありますよね?」
「そうだけど」

アイツのところに行かせるようなもんじゃんと頭を掻きながら悪態をつく白澤。
アイツとは多分鬼灯様の事なのだろう。
まったくこの人はつくづく子供なんだから。

「とにかく、何をしても行きますから」
「絶対に嫌だ。だって僕の仕事増えるし女の子と遊ぶ時間だって減っちゃうし」
「そう言うと思ってました。仕事しろニート」
「仕事してんじゃん!」

ギャーギャーと噛み付くように反論する白澤を他所に籠を背負い、その場から出る準備をした。戸の所にはお嬢さんが驚いたようにぼーっと立っていた。
それも気づかないとは白澤様、なかなかヒートアップしてるらしい。

「仙桃切らしたので取ってきます。お客様ですよ、白澤様」
「っ!」
「ちゃんと考えといて下さい」

戸の近くのお嬢さんにごゆっくりと言うと私は仙桃を取りに出て行った。
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