夢小説〜銀魂(LONG)〜

□第九訓
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暗い路地裏を歩く女が一人。
女の前には妖しく微笑む男が一人。

「お前にしては珍しく時間に遅れたな」
「30秒ぐらいじゃねーか。細かい男は嫌われんぞ」

ふんと鼻をならし愉快そうに笑う男の右目は包帯に覆われていた。
まるで見つけて欲しいかのように煌びやかな着流しを着ている男は自分よりも背丈が小さな女の耳元に唇を寄せる。

「今回の依頼の件だが、全部お前に任せる」
「あっそ。いっつも全部任せてんだろお前らは」
「そうでもねえだろ」
「時間や場所の指定ぐらいだろーが」
「それもそうだったかもな」

くっくっと喉で笑う男。
何が愉快なのかは女には一切わからなかった。
わかりたくもないが。

「それから、また近いうちにお前を連れてくからな」
「宇宙旅行なら喜ばしいんだが、どーせまた大きな事をやらかすつもりなんだろ」
「さあ、どうだろうな」

にやりといつもの妖しげに笑う男は女に一枚の封筒を渡した。
この中に依頼内容が入ってるという事か。
ここでは読まず別れてから読もうと思い、懐にしまう女。
それに気を良くしたのか男はまた微笑んだ。

「後払いでいいだろう?」
「ああ。いい加減聞かなくても良いだろう」
「社交辞令みたいなもんだ。それからあんまり邪険にするな。殺しちまうかもしれねぇ」
「ふん。約束なんて破ってなんぼだってか?」
「いーや。お前と関係した者を殺す」
「はあ?」

この男は何を言い出したのか。
果たして正気なのか。
いや、まずこんな依頼をしてくる男がまともなはずないだろうと女は思う。
こんな、狂気に満ちた奴。
どう見たってまともなわけない。

「それじゃ、頼んだぞ玉藻」
「ん」

短い返事は男の唇で閉じられた。
離れた顔は満足そうな顔だった。
踵を返し、男は去って行った。

「ほんとに、わけわかんねえ奴」

女は頭をがしがしと掻くと歩きながら依頼内容の書いてある封筒の封を切った。
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