夢小説〜銀魂(LONG)〜
□第四訓
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さてさて、自分からふっかけておいてなんだがまさか本当に一本やるとは思わなかった。
しかも相手はチンピラ土方。
「おい、竹刀でいいよな」
「え、なに?真剣使おうとしてたのか?」
「あ?」
「なんでもねーよー。竹刀寄越せし」
今は新撰組屯所内の道場に来ている。
そして、暇な隊士たちは全員この試合を見に来たようだ。
ギャラリーが多くて煩い。
「さて、じゃあ良いですかな?霧隠殿。」
「あ、局長さん。別に下の名で呼んでくれて結構ですよ。上は慣れてないので聞き逃すかもしれませんし」
「そりゃ失礼した。では、これからトシ対玉藻殿の試合を始める。ルールは簡単。相手に参ったと言わせる事。また審判の私、近藤が続行不可能だと判断した場合は引き分けとする。では両者ともに礼!!」
「「…」」
何故かノリノリの近藤についていけない土方と玉藻。
まあいっかと気持ちを切り替え、土方に向き直ると手加減はしねえと言われた。
そんな事最初から分かっていた事だが一応言うのが彼の礼儀らしい。
しんと静まり返る道場内。
土方と玉藻のジリジリ間を詰める衣擦れの音と呼吸の音しかしない。
鹿威しが落ちるその音をきっかけに両者は動き出した。
「ふっ」
土方の竹刀を捌きながらニコニコしている玉藻。
「なにニヤニヤしてんだ気持ち悪いっ」
「何言ってんだ、あたしゃいつも笑顔ですよっと」
胴目掛け横薙ぎされた土方の竹刀をバックステップでよけ、竹刀を抜刀する様に腰に持っていく玉藻。
そしてそのまま、抜刀姿勢をとる。
「お前…竹刀で抜刀するつもりなのか…!?」
さすがの隊士たちもどよめく。
土方はあり得ないと竹刀を構え直しながら呟く。
(抜刀ってのは鞘ばしりを使ってできるもんで手で、しかも竹刀でやろうなんざ阿保のする事だぞ!?)
「それが出来るんだなぁ土方くん」
ニヤリと笑う玉藻は土方の考えている事を理解した様に相槌を打つ。
ふっと息を吐いたかと思うと玉藻は竹刀を抜刀した。
「っ!?」
抜かれた竹刀は土方の首元でピタリと止まる。
まるでそこが定位置だと言う様に。
「ま、参った…」
竹刀を落とし、両手を上げ降参のポーズをとった土方。
にへらと笑い
「お粗末さまでした」
と玉藻は返した。