Another Side

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〜当日〜


「いいか?くれぐれも無理はするな?」


「うん!三成もね!」


「貴様…人の心配などしてないで自分の心配をしたらどうだ?」


ーーーーーーーーーーー


私は渡された刀を見ていた。

真剣を振るのは、当たり前だが初めてだ。


「美桜、行くぞ!」


「う、うん…」


「怖いか?」


「別に怖くなんか…」


「やっぱりお前は来るな。
迷いがあっては斬られる」


斬られる…。でも、これを乗り越えないと…!


「だ、大丈夫だから!
ほら、行くよ!?」


きっと大丈夫、自分にそう言い聞かせて私は重い足取りで戦場へ向かった。


だが、私の考えは甘かった。


「美桜、そっちへ行ったぞ!」


敵自体は弱いものの、数が多い。

三成が私を守るにも限界があった。


私はここにきて初めて刀を抜いた。

ぞくりと背筋が凍る。


これを振り下ろしたら、人が死ぬんだ…。

自分の手によって人が死ぬんだ…!

ー怖い!斬れないよ!


そう思った途端、何かに取り憑かれたように両足が動かなくなった。


「あ……ぁ………!」


相手が武器を振り下ろしてくる。

頭が真っ白になったその時、私の視界は真っ赤に染まった。


「美桜様、危なっ…!」


目の前で真っ二つになる人。

私の危険に気付いた兵士が私をかばって…

私のせいで、人が死んだ…


「ああああああああああああ!!!」



気付くと、そこに立っているのは私と三成と味方の兵士だけだった。

私の手にはしっかりと血の滴る刀が握られていた。

足元には血だまりができていて、海のようだった。


辺りに広がる悲惨な状況と、むせかえるような生臭さに思わず口元を抑えた。


「おい美桜、しっかりしろ!
大丈夫か?怪我は?」


「これ…私がやったの…?」


「…そうだ。お前、強いな」


「…う。」


「?なんだ?」


「違うよ…。違う、違う違う違う違う違う!
私は強くなんかない!!」


「お、おい!美桜!?」


私は強くなんかない、弱かった。

私のせいで死んだ人、一人。

私が殺した人、たくさん。

三成達も人を殺しているけど、私のとは訳が違う。

三成には志がある。

私には何もない。

私はただの人殺しだ。
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