隠恋慕

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「ねぇ月咲、いつ好きだってこと伝えんのさ?」


ここに来てから1ヶ月以上経とうという時、いきなり甲斐に質問された。

小太郎の姿が頭に思い浮かぶ。


「いや……無理だよ…」


「ふーん?」


甲斐がニヤニヤしながら見てくる。

しまった!と思うが、もう遅い。


「誰のこと考えてたの〜??」


わかってるくせに。

でも、ここで認めたら負けだ。


「別に!好きな人なんていないから無理なの!!」


「へえー?」


「もうっ!大体ねぇ…

私はいつ元の世界に戻るのか分からないんだから、恋したって後で辛いだけだよ…」


「……まぁ、確かにそれも一理あるわね…」


「でしょ?だから私は誰のことも好きにはならないの!」


「…でもさぁ、もう少し自分に正直になってもいいんじゃない?
薄々気付いてるんでしょ?」


「……」


「なら、もう遅いよ。
口では好きじゃないって言えても、心はそうはいかないよ?」


「うっ…」


さっきから図星をつかれすぎだ。

やっぱり、どうしても割り切れないところがある。


「はぁ…」


「ほら〜!恋患ってるじゃん!
もう、認めちゃいなよ!私の前だけでも!」


「うぅ…」


「ほらほら、言っちゃえ!」


「…私ね……す、好きなの…こ、小太郎のことが……」


本人に言ってるわけじゃないのに、心臓が異常なほど煩かった。
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