隠恋慕

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「あんたが未来から来たっていう嬢ちゃんか」


「あ、はい。月咲っていいます!」


これはこれは、北条家当主の氏康さんじゃないですか!

オッサンを想像してたけど、オジサマだった!!


「一つ聞くが、あんた住むとことか金とかあんのか?」


うっ…痛いとこつくな、この人…



「何も無いです……」


現代のお金ならあるけど、ここじゃあただの紙切れだ。


「だろうな。仕方ねぇ、ウチに住んだらどうだ?
まあ、こいつは最初からそうさせるつもりだったらしいがよぉ」


そういって彼は、甲斐が小太郎と呼んでいた男を見た。


どうやら、私みたいな珍しいものに目がないようだ。


でも、“ウチ”ってのはお城ですよね?
私、庶民なんですけど?


でも…と戸惑っていると、じゃあ生きていけんのか?と言われてしまった。


「無理です…」


「じゃあ決まりだな。おい小僧、こいつの面倒みてやれ」


「は〜い」



私は今、パニクってます。

なぜなら、一人じゃ着物なんて着れないからです。

現代っ子の私が着物を一人できることなんてまず無い。
しかし、彼女はその事実を知らない。

さあ、どうしましょう。

「あの、甲斐姫さん…」

意を決して襖の向こうに声をかけた。


「なに?どうしたの?」


「いや、あのですね…着物、一人で着たことなくて…」


「えぇ!?着れないの!?」


「ごめんなさい…。」


「よし、じゃあ私が特別に教えてあげる!」


おぉ!様になった!

というか、この着物凄くかわいい。
こんな着物、戦国時代にあるわけないよね。
ここって、パラレルワールドなのかな?


「なかなか似合うじゃん!さすが私!」


「ありがとうございます!」


「いいのいいの!あと、敬語じゃなくていいから!呼び方も甲斐でいいよ」


「ホント!?私も月咲でいいよ!」



こうして私は甲斐と仲良くなれた。
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