僕と彼女の奇妙な関係に終止符を。

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「ねえねえ、ベルリンは今恋してますか?」


夕食の時、突然の質問に動揺した僕はスープを吹き出しかけてむせた。


「ブッ!…いきなりどうしたの?」


話によると、恋をしてみたいから、恋してる人のアドバイスが欲しいらしい。

ひねくれていて変人なセーラのことだから、わざとそういうことを言ったのかと思った。

でも違った。彼女は意外と純粋だった。


「セーラも、どうしても言えないことだってあるでしょ?
これ以上ライナーを困らせないであげて」


焦って思わず言ってしまった一言。

これじゃあまるで、さっきセーラが言っていた“所詮は他人”いうのを肯定しているようだ。

その時、僕は見てしまった。

セーラの淡いグリーンの瞳からこぼれ落ちる透明な雫を。


「!!ごめん、セーラ!
そういうつもりじゃ…!」


「どうして謝るの?
困らせたのは私よ?」


淡々とした口調で言うセーラだけど、相変わらず大きな瞳からは涙が落ちていく。


「変なこと聞いてごめんなさい」


そう残して彼女は出ていってしまった。


「追いかけなくていいのか?」


「僕にそんな資格はないよ…」


「お前以外で誰があいつと会話できるんだよ」


それは僕と彼女に失礼だ。

そう言おうとしたけど心の中にしまいこんだ。


「セーラッ!」


案外すぐにセーラは見つけることができた。

彼女はよく寮の屋上でサボっていたから行ってみると本当にそこにいた。


「ベルベット…どうしたの?」


「それはこっちの台詞だよ…
ごめんね、さっきは言いすぎた。
たから泣かないで…?」


「私、泣いてない。」


違う、気づいてないだけで確かに君は涙を流している。

その綺麗な雫に僕なんかが触れてもいいのかはわからないけど、それ以上落としてしまうのが勿体無く思えて僕の指ですくった。


「ねえ、セーラ。
そんな顔で泣いてないって言われても説得力がないよ」


「あれ…これ、私の涙かぁ!
私、泣いてるんだね!」


何が嬉しいのか、セーラは笑顔になった。


「嬉しいなぁ!
無表情と笑う以外にも私に表情があったなんて!
レトルトくんが発掘してくれたんだね!」


「僕はただ、セーラに酷いことをしただけだよ…」


「いいよ、そんなこと!
それよりもさぁ、もっと私の表情を発掘してよ!」


そう言って涙を流しながら笑う君はひどく美しかった。
 

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